日本大百科全書(ニッポニカ) 「オキアマダイ」の意味・わかりやすい解説
オキアマダイ
おきあまだい / 沖甘鯛
Tosa's bandfish
[学] Owstonia tosaensis
硬骨魚綱スズキ目アカタチ科ソコアマダイ亜科に属する海水魚。熊野灘(くまのなだ)、和歌山県、土佐湾などの太平洋沿岸、台湾南部、南シナ海、フィリピン諸島、西オーストラリアなどの海域に分布する。体はやや伸長して側扁(そくへん)し、体高は背びれの起部でもっとも高く、後方に向かってすこしずつ細くなる。体長は臀(しり)びれの起部で計測した体高の3.6~4.5倍。頭は短く、頭部の外郭は緩く湾曲する。目は大きくて、眼径は吻長(ふんちょう)より著しく大きい。吻端上方のわずかなくぼみに4個の乳頭状突起がある。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の下縁に5~7本の短い棘(きょく)がまばらに並ぶ。口は大きく上向きで、上顎(じょうがく)の後端は幅が広くなり、目の後縁下に達する。上下両顎には細長く、わずかに湾曲した外列歯が1列に並び、前端に数本の内列歯がある。全鰓耙(さいは)数は45~51本。体は小さい鱗(うろこ)で覆われる。項部(背びれ起部より前の後頭部)は鱗をかぶり、頬(ほお)に4~5列の鱗がある。縦列鱗(りん)数は44~54枚。側線は鰓孔の上方から始まり、背びれ第2軟条へ向かって上昇し、背びれの基底に沿って走り、背びれの最後の軟条下方で終わる。側線は始部で分枝するが、普通は左右が背びれ起部の前方でつながらない。背びれは1基で3棘23~24軟条、臀びれは1棘15~16軟条で、両ひれは尾びれとつながらない。胸びれは19~21軟条。腹びれは伸長し、臀びれの1~5軟条まで達する。尾びれは槍(やり)状で、中央部の軟条は伸長する。頭と体は背側面では赤色で、腹側面では白っぽい。背びれと臀びれは黄色で、基部は桃色。尾びれの上半分は桃色で、下半分は黄色。対鰭(ついき)(胸びれと腹びれ)は桃色。200~300メートルの砂泥底の穴に生息し、底引網でまれにとれる。最大体長は30センチメートルほどになる。摂餌(せつじ)や生殖方法など、その他の生態はよく知られていない。
本種はソコアマダイ属に属するが、同属のほかの3種のソコアマダイ、ソコアマダイモドキO. japonicaおよびオオソコアマダイとは、体が肛門(こうもん)の後方で急に細くならないこと、背びれと臀びれの軟条数が多いこと(ほかの3種では背びれは20~21軟条、臀びれは13~14軟条)などで区別できる。
[尼岡邦夫 2021年8月20日]