翻訳|October
アメリカの代表的美術理論誌。マサチューセッツ工科大学出版局が版元で、1976年の創刊以来季刊のペースで刊行を重ね、通巻号数は2002年に100号を突破した。同誌を創刊したロザリンド・クラウスとアネット・マイケルソンAnnette Michelson(1943―2018)の2人はともに気鋭の美術評論家であると同時に、美術雑誌『アート・フォーラム』Art Forumの編集にも携わった経験があり、商業主義に流されがちな既存の美術ジャーナリズムに対する不信と不満が新雑誌を創刊するにあたっての大きな動機となった。10月を意味する誌名はソ連の映画監督セルゲイ・エイゼンシュテインの同名の映画にちなんだものであり、高度でまた挑発的な理論の展開をもくろんだ編集姿勢は、白地の表紙にロゴと目次を印字しただけの学会論文集のようなシンプルな装丁、活字主体の誌面構成、「私たちにとって、芸術的実践と批評理論が社会構築の試みにおいて結びつく、特殊な歴史的瞬間の象徴」という創刊号の緒言、ギャラリーの広告をいっさい掲載しない編集方針などに認めることができる。
おもな寄稿者としては、2人の創刊者のほかに美術評論家ダグラス・クリンプDouglas Crimp(1944―2019)、ジョアン・コプチェクJoan Copjec(1946― )、ベンジャミン・ブクローBenjamin H. D. Buchloh(1941― )、ハル・フォスターHal Foster(1955― )らがおり、いずれもフランス現代思想の強い影響を受けた論考を発表しているほか、ジャン・フランソワ・リオタール、イブ・アラン・ボア、ドゥニ・オリエDenis Hollier(1942― )など、フランスの論客の寄稿も多く、常連寄稿者の多くは、同誌のアドバイザーを務めている。若くしてエイズで亡くなった評論家クレイグ・オーエンズCraig Owens(1950―1990)が編集長を務めていた1980年代にはポスト・モダン、ポスト構造主義、精神分析など、フランス現代思想系の議論が圧倒的多数を占めた。1990年代に入るとオーソドックスな作家論や美術史を志向する傾向が強まるなど、一種の理論派サークルの観を呈していた同誌の誌面にも変化が現れ、同時代のアート・シーンの言説状況との密接な並行関係がうかがわれる。しかし、クレメント・グリーンバーグを筆頭とする、モダニズム批評に対抗する理論的な立場を築こうとする姿勢は創刊時より一貫している。同誌に掲載された論考の多くが、ハル・フォスター編『反美学』Anti-Aesthetic(1983)などの単行本にまとめられて出版されており、その一部は日本にも翻訳・紹介されている。
また発表された原稿のダウンロード・サービスを開始したり、姉妹誌的な性格を持った理論誌『グレイ・ルーム』Grey Room(2000)が創刊されるなど、『オクトーバー』の理論的実践は新たな段階を迎えた。理論的言説の不在が指摘される日本の美術ジャーナリズムにも、同誌のような美術理論誌の出現が期待される。
[暮沢剛巳]
『ハル・フォスター編、室井尚・吉岡洋訳『反美学――ポストモダンの諸相』(1987・勁草書房)』▽『ロザリンド・E・クラウス著、小西信之訳『オリジナリティと反復――ロザリンド・E・クラウス美術評論集』(1994・リブロポート)』▽『ハル・フォスター著、槫沼範久訳『視覚論』(2000・平凡社/平凡社ライブラリー)』
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