株式や債券といった金融商品自体ではなく、あらかじめ定められた期日に定められた価格で金融商品を売ったり買ったりする権利を取引するデリバティブ(金融派生商品)の一種。権利の買い手は売り手に「プレミアム」と呼ばれるオプション料を支払う。少ない資金から取引できるため、現物への投資に比べて高い利益を生む可能性がある一方で、損失が拡大するリスクもある。(共同)
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有価証券そのものを売買する取引ではなく,有価証券を将来の特定の期日にあらかじめ定められた価格で買付けまたは売付けすることが可能な権利を売買する取引。欧米ではすでに制度化されている。〈オプション〉は自由な選択を意味する言葉であるが,ここにいう〈オプション〉は買付けまたは売付けすることのできる選択権付証書のこと。もともと16世紀のオランダでチューリップ球根の売買においてオプション取引が始まった。球根栽培業者は将来の球根収穫時に一定の値段で一定量の球根を引き渡す旨を記したオプションを売り出し,球根取引業者はそのオプションを買うことにより将来の価格ヘッジを行った。有価証券売買についてのオプション取引は1690年代にロンドンで始まった。もっとも,これらの時代におけるオプション取引は,オプション自体に信用の裏付けがない,オプションは相対取引で市場性がない,など制度的に不備なものであり,事故も多かった。
制度的に整備された現在のオプション取引は,1973年4月アメリカのシカゴでオプション取引所創設をもって始まった。同取引所はオプションに信用性を付与し,オプションの規格を統一し,大量の需給を集中させ,公正なオプション価格の形成可能な流通市場を整備した。同取引所のオプション売買高は創設後5年にして3倍になり,ニューヨーク取引所株式出来高の1/3にまでなった。シカゴ取引所での成功がきっかけとなり,その後,アメリカで3ヵ所,ヨーロッパではロンドン,フランクフルト,アムステルダムなどでオプション取引所が設立された。
オプションにはコール・オプションとプット・オプションの2種類がある。コール・オプションとは将来の特定日に一定数量の有価証券を一定価格で買い付けることができる選択権であり,プット・オプションは売り付けることができる選択権である。たとえば,時価30ドルのA株式を3ヵ月後に35ドルで買い付ける選択権を付したコール・オプション,6ヵ月後に25ドルで売り付ける選択権を付したプット・オプションなどがある。前者の場合,もし大半の投資家が3ヵ月後にA株式価格が40ドルになっていると考えるなら,このコール・オプションは5ドルの価格をもつことになる。株式相場の強調が続きA株式価格が50ドルをつける勢いになれば,このコール・オプションは15ドルの価格をもつことになろう。シカゴの例でいえば,1オプションが100株で構成されるため,当初500ドルの投資額が1500ドルに増価していることになる。もしA株式が不振でオプション行使の期限時点で35ドルを下まわっている場合,投資家は買付けを放棄する権利を有しており,その場合損失は当初投資額の500ドルにとどまる。このようにオプション投資は少額で大きな利益を得ることが可能で,しかも損失も限定されるところから個人投資家に大きな人気をもっている。日本でも89年から株価指数のオプション取引が導入された。
執筆者:飯尾 博信
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(吉川満 (株)大和総研常務理事 / 2007年)
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