改訂新版 世界大百科事典 「オラオン族」の意味・わかりやすい解説
オラオン族 (オラオンぞく)
Oraon
インドの代表的原住民部族の一つ。ビハール州南部のチョタナーグプル高原に住み,人口は60万を超すといわれている(1961)。インド原住民一般と等しくプロト・オーストラロイドないしベッディードと呼ばれる人種型に属し,スリランカの原住民ベッダ族に通ずる人種的特徴を示す。使用言語はクルクー語といわれ,南インドのドラビダ語の系統とされるが,固有の言語であったかどうかは明らかでない。元来は焼畑耕作を営んでいたと考えられるが,現在は高原での定着水稲栽培を営む。農閑期の出稼ぎや日雇労働も古くから盛んである。父系血縁関係にもとづく政治・社会組織,若者宿組織,アニミズム的信仰,巨石文化複合と結びつく祖先崇拝,予祝儀礼的狩猟など,同じ高原に住むムンダ族やサンタル族にほぼ等しい文化的特徴を示す。部族民としていわゆるカースト制度の枠外に位置しているが,ヒンドゥー教徒との社会的・宗教的交渉は古い時代にさかのぼる。
執筆者:山田 隆治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報