アルジェ(読み)あるじぇ(英語表記)Alger

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルジェ」の意味・わかりやすい解説

アルジェ
あるじぇ
Alger

北アフリカ、アルジェリアの首都。国の政治、経済、学術・文化、交通の中心地である。人口151万9570(1998)、271万2944(2008センサス)。アラビア語ではアル・ジャザイルal-Jazā'ir、El Djazaïrといい、「島」という意味である。10世紀、アルジェ湾の北西端にある島々と岬とを連結して人工陸繋(りくけい)島とし、その内側に強い北西の風波を避ける港をつくったのでこの名がある。湾を囲む標高150~200メートルの丘の斜面に白い地中海風の建物の並ぶ市街が広がる。

 フェニキア、ローマ時代は、イコシウムIcosiumとよばれる植民都市の一つであった。10世紀に港が築かれ、16世紀オスマン帝国領となり、アルジェに総督府が置かれてから、アルジェリアの政治、経済の中心として発展した。港から丘の中腹にかけ城郭都市(カスバ)がつくられ、18世紀には10万の人口を有した。植民地時代にはフランス総督府が置かれ、カスバの東西にヨーロッパ風の市街地が形成されていった。鉄道の始発駅ができ、東側に近代的港湾や工場地帯もつくられて、市街地は東のエル・ハラーシュと丘の上に拡大した。都市人口はヨーロッパ人のほうが多かったが、1951年、アルジェリア人人口がヨーロッパ人人口を上回り、市街地の周辺ではスラムが増加した。第二次世界大戦後は、サハラの石油ブームで高層ビル、高層アパートの建築が盛んになり、フランスの建築家ル・コルビュジエも都市計画に参画した。独立戦争中フランス軍は周辺の村落を破壊したので、都市流入人口はさらに増加した。

 1961年のアルジェリアの独立のころ、81万の人口のうち35万人を占めたヨーロッパ人は、独立と前後してほとんど引き揚げ、残された不動産は国有化された。政府は社会主義を指向し、政治、経済の管理中枢は首都に集中し、工場も近郊に立地したので、爆発的に人口が増加した。独立後45万に減少した人口は1966年に90万人と倍増し、1977年には134万人に達した。人口集中は、深刻な住宅難、交通渋滞、駐車場難、夏の水不足、学校・教師の不足、多数の失業者などの問題を生じている。このため衛星都市の人口吸収、外国公館の郊外移転など人口分散計画をたてている。カスバの麓(ふもと)からアガ駅までの帯状の地域に国家機関が集まり、中央業務地区になっている。これに平行するベンメヒディ・ラルビ通りからディドゥシュ・ムラド通りにかけてが繁華街である。名所として、映画『望郷(ペペルモコ)』『アルジェの戦い』で知られる旧城郭都市カスバ、バルトー博物館、古代博物館、植物園などがある。近郊にファリ・ブーメディエン国際空港がある。

[藤井宏志]

世界遺産の登録

カスバは1992年、ユネスコ(国連教育科学文化機関)により「アルジェのカスバ」として世界遺産の文化遺産に登録された(世界文化遺産)。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルジェ」の意味・わかりやすい解説

アルジェ
Alger; Algiers

アルジェリアの首都。正式名称はアルジャゼーイル Al-Jazā'ir。アルジェリア地中海沿岸中央部,アルジェ湾に沿って並行するサヘル丘陵の斜面に建設された都市で,周辺には広い平野がある。気候は冬湿夏乾の典型的地中海性気候で,冬は平均 13℃,夏は 26℃。古代フェニキア人が植民地として建設し,ローマ時代にはイコシウム港として繁栄,その後たび重なる異民族の侵略によって破壊されたが,10世紀にベルベル人がその廃墟の上に王都を建設した。 1509~17年にはスペインの,その後はオスマン帝国の支配下に入ったが,行政,商業の中心として繁栄。地中海を震え上がらせた海賊の基地ともなった。 1830年以来フランスの占領下に置かれ,近代都市に発展し,1962年の独立とともに首都となったが,市民の半数を占めていたヨーロッパ人はほとんど退去し,内陸部からそれを上回る数のベルベル人が流入した。オスマン帝国時代の面影が残る 11世紀のモスク,カスバ (城砦都市の意) は 1992年世界遺産の文化遺産に登録。対照的に港を囲む中心街には高層ビルが林立,大都市圏を形成している。東近郊を中心に食品加工業,金属工業,化学工業を主とする工業地帯がある。人口の急増とともに一部郊外がスラム化しつつある。港からは鉄鉱石,リン鉱石,ワイン,コルク,オリーブなどが輸出される。教育,文化の中心地で,アルジェ大学 (1859創立,1909再建) をはじめ多くの研究機関がある。人口 274万(2009)。

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