日本大百科全書(ニッポニカ) 「オリエンテーリング」の意味・わかりやすい解説
オリエンテーリング
おりえんてーりんぐ
orienteering
地図上に示されたいくつかの地点をできるだけ短時間に探し当てて回る競技。ドイツ語ではOrientierungslauf(略してOL)といい、方向を定めるという意味のOrientierenと走るという意味のLaufの合成語である。未知の地域で方向を探知する能力と体力、的確な行動が必要とされる。地図を読みながら美しい自然に触れ、冒険心を満足させることのできるスポーツで、形式や種類も多く、自己の能力にあったクラスで参加することができるので幅広く大衆的なスポーツとなった。
[徳久球雄]
歴史
OLは、山野を跋渉(ばっしょう)する北欧の狩猟民族の伝統と地図の発達に深い関係があり、1893年ストックホルム近郊で未知の地形での歩兵の伝令競技が行われた記録があるが、スポーツとしてのOLは1919年スウェーデンのエルンスト・シランデルErnst Killanderの提唱によって開かれたOL大会に始まる。その後、1938年にスウェーデンオリエンテーリング連盟、61年に国際オリエンテーリング連盟(IOF)が設立され、1966年には第1回世界選手権大会が開かれて、以来、一度の例外(78、79年は2年連続開催)を除いて1年おきに大会が開かれている。日本では1966年(昭和41)東京の高尾山で徒歩ラリーが開かれたのが始まりで、69年に日本オリエンテーリング委員会が設立されIOFに加盟、70年以後パーマネントコース(OL常設コース)が次々と設定され、各地でOL大会が開かれ、クラブや同好会も増加している。1991年(平成3)には日本オリエンテーリング委員会を発展的に解消して社団法人日本オリエンテーリング協会(JOA)が設立され、2005年には愛知県で世界オリエンテーリング選手権大会が開催された。
[徳久球雄]
分類
OLをいくつかの観点から分類してみると次のようになる。
[徳久球雄]
形式による分類
(1)ポイントOL もっとも一般的で、決められたポスト(チェックポイントのこと。コントロールともいう)を定められた順序ですべて通過し、所要時間の少ない者を勝者とする。
(2)スコアOL 一定時間内にできるだけ多くのポストを回るもの。ポイントOLのように定められた順序はないが、各ポストに異なった点数がつけられ得点を競う。
(3)ラインOL 進むべきコースがラインで示され、ライン上の図示されていないポストを自分で発見して行き、その所要時間によって順位を決めるもの。
(4)バーンOL 進路が指定され、ポストまで誘導される。そのポストの位置を地図上に点で示し、その正確さが競われる。
[徳久球雄]
競技時間の分類
昼間が一般的だが、夜間に行うナイトOLという形もある。
[徳久球雄]
必要な能力
OLは幅広いスポーツだが、この競技に必要な能力を考えると次の三つに分類できる。第一は体力的要素で、歩く力、走る力が要求される。第二には心理的要素で、1人で自然の中で判断しながら行動する冷静さ、総合力が必要である。第三には技術的要素で、地図の読図、歩幅による距離測定やコンパスの使用などの技術が要求される。また自然の中で行動するので、天候の変化に対応する行動、危険に対する対策なども技術的な要素といえよう。
スウェーデンで毎夏開催されるオーリンゲン大会には1万人以上の参加者があり、老若男女を問わず、また走力の優れた人だけでなく家族でも参加でき、自然を愛しながら行動するところにこのスポーツの特徴があるといえよう。
[徳久球雄]
ウォークラリー
オリエンテーリングに似た野外スポーツで、日ごろの知識や教養も試される。徒歩OLの一種ともいえ、1980年(昭和55)に静岡市で初めて行われた。コース図を基に、3~6人が一組で歩くもので、10か所程度のチェックポイントと3~4か所程度の観察ゾーンが設定される。チェックポイントでは「春の七草のうち、2種類を採取してください」といったさまざまな課題が与えられる。ゴールインのあとには、観察ゾーン内のことについての問題が渡され、グループで相談して解答する。徒歩距離は5~6キロメートルだが、基準タイムが設定されていて、これは発表されず、問題の解答による得点と基準タイムに近いゴール時間による得点の合計で順位が決定される。徒歩OLよりもゲーム的要素が取り入れられているので、レクリエーションとしてのオリエンテーリングのなかにもこの要素が取り入れられて行われるものも多い。84年に第1回全国一斉ウォークラリー大会が行われた。
[徳久球雄]
『紺野晃著『オリエンテーリング』(1979・講談社)』