おやま【お山・女形】
[一] (お山)
※仮名草子・都風俗鑑(1681)四「いつの比よりいひ初けるにや、人をあしらふ女をお山といふなり」 〔物類称呼(1775)〕
② 遊女のうち、特に、上級の
太夫、天神以外のものをさしていう。〔
随筆・
守貞漫稿(1837‐53)〕
③ 船遊女をいう。
※四井屋久兵衛廻船記録‐隠売女御尋につき願書写(1844)「
船宿へ者『おやま』と唱候女参り、
船子之者へ身売進め候」
④ 一般に、美しい女を称していう。
[二]
①
歌舞伎劇で、女の役をする男の役者。現代では、「
女形」の字をあてることが多い。おんながた。
※評判記・野良三座詫(1684)伊藤小太夫「おやま 伊藤小太夫」
② 操
(あやつり)人形劇で、女役の人形をいう。おやまにんぎょう。
[語誌](1)
語源について、
江戸の
人形遣いの
名人、
小山次郎三郎が巧みに使った女の人形を「
小山人形」といい、その後、女の人形を使う人形遣いを「おやま…」というようになり、それが歌舞伎の世界に移って「女形」のことを「おやま」といい、
美女や遊女の称にも用いるようになったという説がある。
(2)「随筆・嬉遊笑覧‐六」によると、上方には人形遣いや歌舞伎に先立ってもともと遊女を意味する「おやま」という語があったとも考えられる。あるいは、遊女をさす「やましゅう(
山衆・
山州)」に、
接頭語「お」を付けて「しゅう」を略したものか。遊女の意味では上方でのみ用いられる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報