カギカズラ(その他表記)Uncaria rhynchophylla Miq.

改訂新版 世界大百科事典 「カギカズラ」の意味・わかりやすい解説

カギカズラ
Uncaria rhynchophylla Miq.

アカネ科のつる性木本,茎の変形した鉤(かぎ)があり,社寺林などの常緑樹林内や伐採跡などにも生え,高さ数十mの樹冠まで達し,よく枝を張るので,遠目にもそれとすぐわかる。鉤は鉤藤(こうとう),釣藤鉤(ちようとうこう)と呼ばれ,リンコフィリンrhynchophillineというアルカロイドを含み,鎮静,鎮痛薬としてリウマチ,精神不安定,けいれん,小児の夜泣き,てんかんなどに用いられる。近年,血圧降下作用のあることもわかり,心臓および脳血管の病変腎炎あるいは貧血性の高血圧症に効果がある。葉は対生し,卵状楕円形。花は多数の小さい花が密集して頭状花序となり,6~7月に咲く。花冠は細い筒状で長さ7mm,開出する5裂片があり,緑黄色。子房は下位で2室,各室に多数の胚珠がつく。果実は裂開し,種子は小さく,両端に翼がある。日本の南西部と中国に分布する。

 カギカズラ属Uncariaはアジア,アフリカ,アメリカの熱帯・亜熱帯を中心に34種が知られ,中国では数種の鉤がカギカズラと同様,薬用とされる。東南アジアのガンビールノキはガンビール阿仙薬を得るのでよく知られる。この属はヘツカニガキなどとともにカギカズラ科Naucleaceaeとしてアカネ科から独立させる意見もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カギカズラ」の意味・わかりやすい解説

カギカズラ
かぎかずら / 鉤蔓
[学] Uncaria rhynchophylla Miq.

アカネ科(APG分類:アカネ科)の藤本(とうほん)。葉は対生し、葉身は全縁、卵形で先は急に細くなってとがる。若い茎は四角で、葉の基部のすぐ上部に枝が変形した下向きに湾曲した鉤(かぎ)があり、これによって他物によりかかる。茎の各節の上部に、2個と1個の鉤が交互に生じ、他物にひっかかった鉤はとくに大きく成長する。花は小さく、頭状花序をなして腋生(えきせい)および頂生し、7月に白緑色の花冠を開く。房総半島以西の本州、四国、九州、中国の中部と南部に分布する。

 鉤を採取して乾かすと赤褐色となる。これを釣藤鉤(ちょうとうこう)または鉤藤(こうとう)と称し、鎮痙(ちんけい)、鎮痛作用があるため、漢方では小児のひきつけ、高血圧による頭痛やめまいなどの治療に用いる。リンコフィリンなどのアルカロイドを含む。年間約1トンを中国から輸入し、市場品はほとんど中国産のものである。中国にはこのほかトウカギカズラU. sinensis (Oliv.) Havil.があり、花冠は黄色、托葉(たくよう)は円形、全縁で反曲する。カギカズラの托葉は2深裂した線形なので容易に区別できる。

[長沢元夫 2021年5月21日]


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