カギカズラ(読み)かぎかずら

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カギカズラ」の意味・わかりやすい解説

カギカズラ
かぎかずら / 鉤蔓
[学] Uncaria rhynchophylla Miq.

アカネ科(APG分類:アカネ科)の藤本(とうほん)。葉は対生し、葉身は全縁、卵形で先は急に細くなってとがる。若い茎は四角で、葉の基部のすぐ上部に枝が変形した下向きに湾曲した鉤(かぎ)があり、これによって他物によりかかる。茎の各節の上部に、2個と1個の鉤が交互に生じ、他物にひっかかった鉤はとくに大きく成長する。花は小さく、頭状花序をなして腋生(えきせい)および頂生し、7月に白緑色の花冠を開く。房総半島以西の本州、四国、九州、中国の中部と南部に分布する。

 鉤を採取して乾かすと赤褐色となる。これを釣藤鉤(ちょうとうこう)または鉤藤(こうとう)と称し、鎮痙(ちんけい)、鎮痛作用があるため、漢方では小児のひきつけ、高血圧による頭痛やめまいなどの治療に用いる。リンコフィリンなどのアルカロイドを含む。年間約1トンを中国から輸入し、市場品はほとんど中国産のものである。中国にはこのほかトウカギカズラU. sinensis (Oliv.) Havil.があり、花冠は黄色、托葉(たくよう)は円形、全縁で反曲する。カギカズラの托葉は2深裂した線形なので容易に区別できる。

[長沢元夫 2021年5月21日]


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