新田(読み)ニッタ

デジタル大辞泉 「新田」の意味・読み・例文・類語

にった【新田】

姓氏の一。
清和源氏の一族。平安末期、源義家の孫義重が上野こうずけ新田郡に土着し称したのに始まる。
[補説]「新田」姓の人物
新田次郎にったじろう
新田義顕にったよしあき
新田義興にったよしおき
新田義貞にったよしさだ

しん‐でん【新田】

新しく開発した農耕地。特に、江戸時代のものをいう。新開。→本田ほんでん
[類語]水田たんぼ田地青田稲田泥田山田棚田本田美田

あら‐た【新田】

新しく切り開かれた田。新開墾の田。しんでん
「昔の道人、あるいは種を蒔き、―をすきしがごとし」〈沙石集・五〉

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精選版 日本国語大辞典 「新田」の意味・読み・例文・類語

しん‐でん【新田】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 新たに開発した農地。特に、中古以前の墾田(こんでん)に対して江戸時代のものをいう。新開の土地。
      1. [初出の実例]「拝師庄内新田興行事」(出典:東寺百合文書‐り・元応二年(1320)八月一五日・小野末国山城拝師庄沙汰人職請文)
      2. 「新田に申請て十年は無年貢」(出典:浮世草子・日本永代蔵(1688)三)
    2. ( 「じんでん」とも ) 江戸時代、浄瑠璃社会などで、男また、夫をいう。〔洒落本・虚実柳巷方言(1794)〕
    3. 処女。
      1. [初出の実例]「其餓鬼を作る様に新田(シンデン)を開いたもあいつが鍬先き」(出典:浄瑠璃・万戸将軍唐日記(1747)四)
    4. 江戸時代のタバコの銘の一つ。上等品に属した。
      1. [初出の実例]「わっちが煙草、三十二だがのむがいい。〈略〉新田や菊煙草のやうに、和らかにゃアいきやせん」(出典:歌舞伎・戻橋脊御摂(1813)六立)
  2. [ 2 ] 栃木県小山市の地名。江戸時代は、奥州街道小山と小金井の間にあった宿駅。

にった【新田】

  1. [ 一 ] 群馬県南東部の郡。大間々扇状地の南端から利根川北岸一帯を占める。古くは「にふた」とも訓。
  2. [ 二 ]にったじんじゃ(新田神社)[ 一 ]」の略。

あら‐た【新田】

  1. 〘 名詞 〙 新たに開墾した田。新しい田。
    1. [初出の実例]「真菅おふるあら田に水をまかすればうれしがほにもなく蛙哉」(出典:六家集本山家集(12C後)上)

にった【新田・仁田】

  1. 姓氏の一つ。

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日本歴史地名大系 「新田」の解説

新田
しんでん

[現在地名]新潟市新田

天保郷帳にみえる玄的げんてき新田(一一九石九斗余)向島むかいしま新田(二七九石七斗余)坂井さかい村請(五九石五斗余)丸潟まるがた新田(一五〇石三斗余)嘉礼喜かれき新田(八五石四斗余)築千坊ちくせんぼう新田(六〇七石三斗余)高山たかやま村請(九六石二斗余)五十嵐浜いからしはま(九五石余)新通しんどおり古新田(五二石七斗余)槙尾まきお村請(四九石余)の一〇新田は、新川開削によるおお潟開発で成立した村々で、昭和二九年(一九五四)坂井輪さかいわ村の新潟市合併に伴い、大字新田に統合された。


新田
にゆうた

現新田を中心とする地域に比定される。建久図田帳に八条女院領国富くどみ庄の一つとして新田八〇町とみえ、地頭は土持信綱(宣綱)であった。当地域には日向国衙官人系の那珂氏が鎌倉末期に関与していたと推察され、建武四年(一三三七)一一月日の日下部(那珂)盛連の軍忠状(郡司文書)には盛連の戦功を認知する人物として畠山直顕のもとに「入田郷殿」がみえる。南北朝末期には伊東祐安が新田四〇町を含む国富庄二一郷を知行している。九州探題今川氏と島津氏の反目のなか、伊東氏は探題方として戦功をあげ、新田は伊東氏一族の小松氏の知行であったと伝えられる(日向記)


新田
しんでん

現佐原市東部の多田ただのうち多田新田ただしんでん付近と思われる。香取社領。弘安元年(一二七八)一〇月一四日の香取神領田数目録(香取文書)の最後に「新田」として田地四町八反余があり、ほとんどが司(大宮司分)であることから、香取社大宮司による開発新田が新たに検注されたものと考えられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「新田」の意味・わかりやすい解説

新田 (しんでん)

荒野などを開墾してできた新しい田地。隠田が領主に申告されていない田地であるのに対して,新田は検注によって領主に把握されている田地である。そして必ずしも新規の開墾地だけでなく,大検注の年に〈年不(ねんふ)〉(その年作付けされていない耕地)だった田地が,新田とされる場合もあった。領主の掌握地とはいっても,本田が領主の年貢・公事賦課の基本的な対象耕地であるのに対し,新田はまだ本田に組み込まれていないので,年貢額もきわめて低いのが通例であった。また,新田の開墾には開発資本が必要であり,しかも安定した収穫が得られるようになるには一定の期間が必要である。そこで中世でも,開墾・開発にあたっては,3年ないし4年間の年貢と雑公事の免除を受けられるのが慣習法となっていた。開墾された新田は,〈古新〉〈本新〉〈出田〉などの中間的な地目を経て,やがて本田となるが,簡単に本田化されるわけではない。新田の年貢額の決定をめぐってはもちろんのこと,本田化にあたっては領主と農民の間で虚々実々の交渉が繰り返された。また,新田の検注権は,一般的には荘園領主がもっている。しかし関東御分とされた東国では,鎌倉幕府は預所の新田検注を認めず,新田を地頭の得分とした。それゆえ新田は,東国における在地領主制の発展にきわめて有利な条件となったのである。
執筆者: 江戸時代の新田には,新しく開発された耕地という一般的な意味のほかに,本田畑に対する新田という法制上の土地範疇としての意味が存在した。本田畑とは,ふつう江戸幕府初期の慶長初年(1596)以前に行われた総検地(古検ともいう)によって石高をつけられた土地をいい,これに対し,その後に新田開発され,寛文・延宝検地元禄検地(新検ということがある)によって新たに高付けされた田畑屋敷地をすべて新田と称した。新田は,比較的大規模なものは本村の枝村となったり新田村として独立することがあったが,その他の場合は新田高として村高の内に編入された。ただし,石盛が低くつけられるなど,あくまで本田畑とは別扱いであり,後年になって両者の差異が事実上なくなっても,土地法制上の区別は形式的に残された。幕府は1726年(享保11)に新田検地条目を制定したが,この条目による享保以降の新田と区別するために,享保以前に成立した新田を古新田と呼ぶことがあった。
執筆者:


新田 (にった)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「新田」の意味・わかりやすい解説

新田
にった

群馬県南東部、新田郡にあった旧町名(新田町(まち))。現在は太田市の西部を占める地区。1956年(昭和31)木崎(きざき)町と生品(いくしな)、綿打(わたうち)の2村が合併して新田町が成立。2005年(平成17)太田市に合併。東武鉄道伊勢崎(いせさき)線が通じる。地域の北部は大間々(おおまま)扇状地で桑畑などの畑作地が広く、南部の大部分は低平な水田地帯である。扇端湧泉(ゆうせん)地帯は標高55メートルで、小金井(こがねい)、市野井(いちのい)、金井(かねい)など「井」のつく集落が分布する。中世新田氏の荘園(しょうえん)として開墾が進み、新田義貞(よしさだ)の挙兵地といわれ、ゆかりの生品神社、反町館(そりまちやかた)跡などの史跡に富む。荘園に関する遺跡は2000年にまとめて「新田荘遺跡」として国の史跡に指定された。旧町域の中心集落の木崎は宿場から発展した小市街地で、買い物町のほかビール工場があり、扇状地では野菜の促成栽培や畜産が行われる。市野倉(いちのくら)開拓地は軍の旧飛行場跡。

[村木定雄]

『『新田町誌』全5巻(1983~1990・新田町)』

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百科事典マイペディア 「新田」の意味・わかりやすい解説

新田【しんでん】

一般的には新しく開発された耕地をいう。江戸時代には基準となる検地までに,すでに村高に組み入れられた耕地を本田(畑)とよぶのに対して,その後に高入れされた地を新田(畑)とよぶ法制上の意味合いがある。地域により,荒野・興屋(こうや)・新開・牟田(むた)・籠(こもり)・搦(からみ)などとも称した。開発規模が比較的小さな新田(切添(きりぞえ)新田・持添新田などという)は本村の高に繰り入れられたが,大規模な新田は本村の枝村となったり,新田村として独立することがあった。幕藩領主は新田開発を積極的に奨励し,新田成立後,数ヵ年にわたっては鍬下(くわした)年季と称して無年貢とし,その後の年貢率も本田畑に比べ低く抑えられた。開発の主体により,代官見立新田・藩営新田・土豪開発新田・町人請新田・村請新田などの区別がある。幕府は1726年に新田検地条目を制定している。
→関連項目枝郷流作場

新田[町]【にった】

群馬県南東部,新田郡の旧町。北部は渡良瀬(わたらせ)川扇状地,南部は低平な水田地帯。中心の木崎は江戸時代,日光例幣使(れいへいし)街道宿場町として発達。東武伊勢崎線が通じる。生品(いくしな)神社境内(史跡)は新田義貞挙兵の地といわれる。2005年3月新田郡尾島町,藪塚本町町と太田市へ編入。38.22km2。3万7人(2003)。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「新田」の意味・わかりやすい解説

新田
にった

群馬県南東部,太田市西部の旧町域。利根川の北岸,渡良瀬川が形成した扇状地の末端部にある。 1956年木崎町と生品村,綿打村の2村が合体して新田町が発足。 2005年太田市,尾島町,藪塚本町と合体して太田市となった。湧水に恵まれ,開発は古い。中世には新田氏一族の荘園が開かれ,地名もこれに由来する。中心集落の木崎日光例幣使街道の宿場町として発展。地下水を利用したビール醸造工場がある。北半部は扇状地面で畑地が多く,キュウリ,トマトなどの促成栽培も行なわれる。南半部は低平な米作地帯で米の生産も多い。肉用牛の飼育も行なわれている。史跡の新田義貞挙兵の伝説地 (生品神社境内) をはじめ,反町館 (そりまちやかた) 跡,江田館跡などの旧跡に富む。

新田
しんでん

江戸時代に新たに開発された田畑や屋敷。狭義には元禄以後のものをいい,それ以前の本田と区別する。洪積台地,扇状地,火山裾野,段丘などの水の乏しい地帯や,浅海,湖沼の周辺や大河川の三角州などの低湿地帯が開発の対象とされた。前者では武蔵野,相模原の新田,後者では有明海,児島湾,紫雲寺潟の干拓新田が代表的なもの。また新田は開拓者や開拓方法の違いによって,切添新田,村請新田,見立新田,藩士行新田,藩営新田,町人請負新田百姓寄合新田などに分けられる。地域によってはヒラキ,シンビラキ,アラヤシキ,コモリ,カラメなどと呼ばれ,家名などとして現存しているものが多い。

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世界大百科事典(旧版)内の新田の言及

【牛村古城址】より

…中国,山西省侯馬市の北西にある春秋戦国時代の城址。この地は,北に汾水が,南に澮水が流れ,春秋時代に晋国の都が置かれた〈新田〉に比定されている。付近には,牛村古城のほか,白店古城,平望古城,台神古城,馬荘古城,呈王古城などの古城址が多数残り,1957年以来たびたび調査が行われている。…

【越後国】より

…こうした傾向の増大が幕府の処理能力を超えたとき,北条氏の鎌倉幕府は終末を迎える。 北条氏没落後の越後は,倒幕の中心の一人新田義貞の手に移ったが,建武政府が短期間で滅んでからは,足利尊氏の側に移った。尊氏は関東を重視して,鎌倉府を置き基氏を鎌倉公方に,上杉憲顕,高師冬を関東管領に任じた。…

【開発】より

…鎌倉末に成立した《沙汰未練書》には〈御家人トハ,往昔以来,開発領主トシテ,武家ノ御下文ヲ賜ハル人ノ事ナリ〉〈本領トハ,開発領主トシテ,代々武家ノ御下文ヲ賜ハル所領田畠等ノ事ナリ〉と述べており,開発領主たることが鎌倉幕府の御家人の本質的属性として端的に示されている。鎌倉幕府は,関東御分国たる東国において,開発された〈新田〉を地頭の得分とし,検注免除の特権を付与した。開発を推進させ,開発地に対する強力な領主権を保障したのである。…

【干拓】より


[日本の干拓]
 東日本に湖沼干拓が多く,西日本に海面干拓が多い。湖沼干拓地は新田という地名であるが,海面干拓は旧藩領によって異なり,八代海の新地,有明海の牟田(むた),搦(からみ),籠(こもり),瀬戸内海の開作,新開などがあり,大阪湾,伊勢湾では新田という。湖沼干拓は17世紀の治水技術の発達によって,干潟八万石,飯沼,見沼,紫雲寺潟などに2000~3000haの干拓地ができた。…

【検地】より

…慶長・元和の検地につぐ寛永・慶安期(1624‐52)の検地は,幕政初期の農政の仕上げともいうべきもので,1649年(慶安2)にはいわゆる〈慶安御触書〉32ヵ条とともに〈検地掟〉26ヵ条(慶安検地条目)が出されている。ついで寛文の関東総検地,延宝の畿内・近国の幕領検地(寛文・延宝検地),さらに貞享の上野などの検地,元禄の信濃・飛驒などの検地(元禄検地)があり,そのたびに新しい規準が若干ずつ加えられていき,1726年(享保11)には詳細な新田検地条目ヵ条が出された。これより享保以前の検地を古検,以後のそれを新検と称し,元禄以前に検地した耕地を本田畑,元禄以後享保以前に検地した新田を古新田といって,享保以後の新田と区別した。…

※「新田」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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