改訂新版 世界大百科事典 「カサマ制度」の意味・わかりやすい解説
カサマ制度 (カサマせいど)
フィリピンの主として米作にふつうにみられた小作形態。分益ないし刈分小作形態の一種である。カサマkasamaとはフィリピン語で〈仲間〉〈相棒〉を意味する。小作料はふつう籾で一定の率で地主に支払われるが,その率は経営費用の分担のあり方によって変化した。たとえば,地主が土地と種子を,小作人が役畜と労働を提供し,田植と収穫費用を両者で折半で分担した場合には,収穫物は地主・小作間で半々に分けられ,これが最も一般的な形態であった。もし小作人が種子代と田植・収穫費を全額負担すれば,収穫物の2/3を取得できたが,これはまれであった。フィリピンの水田の生産力水準はごく低いから,収穫物の折半はきわめて高率の地代を意味し,小作人の貧困化の大きな要因となった。政府は第2次大戦前から小作料統制に努めたが,現在では農地改革によって,稲作とトウモロコシ作については,刈分小作制度は法的に禁じられている。
執筆者:滝川 勉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報