カッツ(読み)かっつ(その他表記)Bernard Katz

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カッツ」の意味・わかりやすい解説

カッツ(Bernard Katz)
かっつ
Bernard Katz
(1911―2003)

イギリスの生理学者。ドイツのライプツィヒで生まれる。1934年ライプツィヒ大学医学部を卒業、翌1935年イギリスに渡り、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジのヒルのもとで学んだ。1939年オーストラリアのシドニー病院でエックルズと共同で神経筋の研究をしていたが、第二次世界大戦となり、終戦までオーストラリア空軍のレーダー士官として従軍した。1946年ロンドン大学に戻り、1952年から1978年まで生理学教授を務めた。

 カッツは神経生理学を長年にわたり研究した。1951年に運動神経末端から分泌されるアセチルコリンが、筋肉に刺激を伝達する物質であることをつきとめ、筋神経の刺激伝達機構を解明した。この功績により1970年ノーベル医学生理学賞を、アクセルロッドオイラーとともに受賞した。

[編集部]

『B・カッツ著、千葉元丞・山田和広訳『神経・筋・シナプス』(1970・医歯薬出版)』


カッツ(David Katz)
かっつ
David Katz
(1884―1953)

ドイツの心理学者。カッセルの生まれ。ゲッティンゲン大学の心理学者G・E・ミュラーの弟子でその助手。のちロストック大学教授となる。ユダヤ人としてナチスによる追放にあう。1937年から晩年までストックホルム大学教授。代表的な実験現象学者としてゲシュタルト心理学のよき理解者であり、資料提供者でもあった。『色の現れ方』(1911)において平面色(スペクトルの色のような実体のない色)、表面色(物体の表面の色)、空間色(液体の色)を区別した。『触世界の構造』(1925)では触の現象を温・冷・圧・痛の要素に分析せずに、ありのままの感じを研究した。『飢えと食欲』(1932)、『人間と動物』(1937)、『ゲシュタルト心理学』(1943)などの著書により、日本でも早くから知られている。

[宇津木保]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カッツ」の意味・わかりやすい解説

カッツ
Katz, Bernard

[生]1911.3.26. ライプチヒ
[没]2003.4.23. ロンドン
イギリスの生理学者。 1934年,ライプチヒ大学医学部卒業。 1935~39年,ロンドンのユニバーシティ・カレッジで A.ヒルの指導を受けて神経生理学を研究。 1939~42年,カーネギー財団の研究員としてオーストラリアに行き,シドニー病院で J.エクルズらと神経筋接合部の機能,特にインパルスが神経から筋線維に移行する点について物理化学的観点から研究した。 1941年,オーストラリアの市民権を取得し,翌年,空軍に入隊。第2次世界大戦後ロンドンに戻り,ヒルの研究所の副所長となり,1950年ユニバーシティ・カレッジ生理学主任,1952年以降は生物物理学教授となる。また,この年にロイヤル・ソサエティの会員となり,1968年,イギリス医師会会員となる。 1970年には,神経線維から骨格筋線維へ興奮が伝達する機序の研究に対し,アメリカの J.アクセルロッドスウェーデンの U.オイラーとともに,ノーベル生理学・医学賞を受けた。

カッツ
Katz, David

[生]1884.10.1. カッセル
[没]1953.2.2. ストックホルム
ドイツの心理学者。実験現象学の代表的学者。 G.E.ミュラーに師事。ロストック大学教授を経て,1937年ストックホルム大学教授。実験現象学的立場から知覚現象の精細な研究を行い,さらに動物,児童に関する発達心理および要求心理に貢献した。主著『色の現れ方』 Die Erscheinungsweisen der Farben und ihre Beeinflussug durch die individuelle Erfahrung (1911) ,『ゲシュタルト心理学』 Gestaltpsychologie (43) 。

カッツ
Cats, Jakob

[生]1577.11.10. ブロウウエルスハーフン
[没]1660.9.12. ハーグ近郊
オランダの詩人,政治家。貴族の家系に生れ,オルレアンで法律を学び,のち行政長官などをつとめた (1636~51) 。 40代になって詩作を始め,「カッツおやじ」の呼び名で民衆に親しまれた。彼の散文詩は日常生活の知恵につながる諺,逸話などを表現したもの,当時の民衆の関心をひく重要な疑問を対話形式で書いたものが多く,教訓的である。代表作『古い時代と新しい時代の鏡』 Spieghel van den ouden ende nieuwen Tijdt (32) 。

カッツ
Katz, Michael Barry

[生]1939. デラウェア
アメリカの歴史学者,教育史学者。ハーバード大学教育系大学院修了後,ヨーク大学教授などを経て,ペンシルバニア大学の歴史学,教育学教授。その研究は公教育,救護院,精神病院などを対象とした教育史,都市史,貧困と福祉の歴史に大別されるが,19世紀以降の資本主義の発展の過程において,いかに人間の社会生活が構造化,制度化されていったかという視点と,多くの資料を統計的処理によって分析する方法は共通している。

カッツ
Katz,Elihu

[生]1926. ニューヨーク
アメリカおよびイスラエルの社会学者。マス・コミュニケーション研究で著名。 1956年コロンビア大学で博士号取得後,同大学応用社会調査研究所,シカゴ大学などを経てエルサレムのヘブライ大学教授。 P.F.ラザースフェルドとの共著『パーソナル・インフルエンス』 (1955) がある。

カッツ
Katz, Daniel

[生]1903.7.19. ニュージャージー,トレントン
[没]1998.2.28. ミシガン,アンアーバー
アメリカの社会心理学者。バッファロー大学,シラキュース大学で学位取得後,プリンストン大学,ブルックリン大学で教える。 1947~73年ミシガン大学教授。世論調査の研究で知られる。また職場集団の研究で特にモラールの分析方法を深めた。

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改訂新版 世界大百科事典 「カッツ」の意味・わかりやすい解説

カッツ
Jacob Cats
生没年:1577-1660

オランダの詩人,政治家。ライデン,フランスのオルレアンで文学,法学を学び,ハーグで弁護士となる。1603年以後ミッデルブルフに住み,農業と干拓事業で財をなし,ミッデルブルフ,ロッテルダムの法律顧問を経て,36年ホラント州議会法律顧問という要職につき,45年国璽尚書になった。多忙な職務のあいだに,信仰と愛をテーマに次々と詩集を出版した。その詩は道徳的教訓と通俗性とすぐれた韻律によって,第2の聖書と呼ばれるほど多くの家庭で愛読された。かつてはフォンデルとともに17世紀オランダの代表的詩人とされたカッツの詩は,現在では,通俗,陳腐,平板のゆえに忘れ去られている。
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百科事典マイペディア 「カッツ」の意味・わかりやすい解説

カッツ

ドイツ生れの生物物理学者。ライプチヒ大学,ロンドン大学を卒業後,オーストラリアのシドニー病院に勤務。1952年ロンドン大学教授。神経末端から筋肉に指令を与えるアセチルコリンの性質と作用を究明。1970年U.vonオイラー,J.アクセルロッドとともにノーベル生理医学賞。
→関連項目アクセルロッドオイラー

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「カッツ」の解説

カッツ Katz, Allmans

?-? オランダの医師。
寛文元年(1661)長崎出島のオランダ商館の医師として来日し,1年間在任。嵐山甫安らにおしえた。アルマンスともよばれ,その治療法は河口良庵の「アルマンス伝方」にまとめられている。

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367日誕生日大事典 「カッツ」の解説

カッツ

生年月日:1884年10月1日
ドイツの心理学者
1953年没

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