エクルズ(英語表記)John Carew Eccles

改訂新版 世界大百科事典 「エクルズ」の意味・わかりやすい解説

エクルズ
John Carew Eccles
生没年:1903-97

オーストラリアの神経生理学者。メルボルン大学を卒業後,オックスフォード大学のシェリントンC.S.Sherringtonのもとに留学し,神経生理学を研究した。その後,オーストラリア,ニュージーランドを経て1968年にはニューヨーク州立大学教授としてアメリカに渡った。はじめ,当時の電気生理学の研究伝統のもとに,とくにシナプスにおける情報伝達機構を研究,化学伝達概念に反対したが,1945年以降は逆にこの概念を用いて興奮性のみならず抑制性の伝達機構をも解明しようとした。すなわち,抑制性伝達物質による抑制性シナプス後電位IPSP)発生を発見,その機構を明らかにした。63年にはそれらの業績でノーベル医学・生理学賞を受賞している。彼はそれらの成果から脊椎動物中枢神経系の研究に従事,さらには脳と意識体験の関係にまで思索を巡らし,《脳と実在》(1970),《脳--その構造と働き》(1977)をはじめ数多くの著作を著している。ニュージーランド時代より科学方法論に関してK.R.ポッパー影響を受け,彼の〈世界3〉の概念の生理学的位置づけの試みもし,共著で《自我と脳The Self and Its Brain》(1979)をも発表している。
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エクルズ
John Eccles
生没年:1668ころ-1735

イギリスの作曲家。エクルズ家は音楽家一族として知られ,ジョンはビオラ教師の父ソロモンSolomon (1618-83)から音楽教育を受け,20代半ばからロンドンで劇音楽の作家として活動を始めた。ことに女優アンヌ・ブレースガードルのために書いたいくつかの作品が好評を博し,やがて新興の劇団リンカン・イン・フィールズの座付音楽家となって,《軍神マルスとビーナスの恋》《アシスガラテア》など,相次いで作品を発表。今日ではパーセルのあとを継ぐイギリスのオペラマスク仮面劇)の作曲家と評価されている。なお彼は,32歳のとき王室楽団の楽長の地位も得ており,晩年はオペラ界を退いて同楽団の仕事に専念した。弟ヘンリーHenry (1670ころ-1742?)は作曲家兼バイオリン奏者。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エクルズ」の意味・わかりやすい解説

エクルズ
Eccles, Sir John Carew

[生]1903.1.27. メルボルン
[没]1997.5.2. スイス,テネロ・コントラ
オーストラリアの生理学者。メルボルン大学卒業 (1925) 後,オックスフォード大学留学。ニュージーランドのオタゴ大学教授 (44~51) 。オーストラリア国立大学教授 (51~66) 。ニューヨーク州立大学医学部教授 (68~75) 。ナイト授爵 (1958) 。神経細胞の興奮が他の神経細胞に伝達されるときに,シナプスで特殊な化学物質が作用することを発見し,また,微小電極法で中枢神経細胞の電気的変化を明らかにした。その功績により A.L.ホジキン,A.F.ハクスリーとともにノーベル生理学・医学賞受賞 (63) 。

エクルズ
Eccles, Henry

[生]1670頃.ロンドン
[没]1742頃.パリ
イギリスのバイオリニスト。 1674年から 1710年までイギリス王室楽団の一員,のちパリに移る。『バイオリン・ソナタ集』 (1720) によって知られる。日本では,エックレスと呼ばれている。

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百科事典マイペディア 「エクルズ」の意味・わかりやすい解説

エクルズ

オーストラリアの神経生理学者。オーストラリア国立大学教授。電気生理学的手法によってシナプスにおける情報伝達機構の解明に努力。1963年ノーベル生理医学賞。1966年以降米国に在住。主著に《脳と実在》(1970年),K.R.ポッパーとの共著《自我と脳》(1979年)など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エクルズ」の意味・わかりやすい解説

エクルズ
えくるず

エックルズ

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