翻訳|morale
職場、労働組合、軍隊などの成員が、そこでの役割に関してもっている心情的態度のことであり、労働意欲、志気、やる気などと訳される。個人レベルのものだけでなく、集団レベルのモラールも考えられ、それは集団の団結性、凝集度にあたる。モラールは、一定の条件の下で仕事をする人々のもつ内面的態度を事実としてとらえた科学的概念であり、人間のあるべき態度を意味する道徳的概念であるモラルmoralとは異なる。
社会学者尾高邦雄(くにお)によれば、モラールの具体的内容は、〔1〕仕事への満足度、〔2〕仕事の意義の自覚、〔3〕所属集団への帰属意識、〔4〕集団の団結力の四つである。産業におけるモラールの概念を初めて体系的に提起したのは、1930~40年代にアメリカで発展した人間関係論であった。そこでは、職場の生産性は、労働条件や組織そのもののあり方により直接に規定されるのではなく、従業員のモラールによって媒介されており、労働条件などが同じでも、モラールの高低によって生産性には差を生ずることが明らかにされた。ただ、その後の調査研究では、モラールの高さと生産性の高さの間には、かならずしも正の相関があるとは限らないこともわかっている。
一般にモラールのおもな規定要因として、作業条件、待遇、職場の組織、上司の監督方式、所属組織の社会的地位と運営方針、外部社会の環境的条件、成員の個人的条件があげられる。職場や労働組合管理の資料として成員のモラールを測定するための態度調査は、モラール・サーベイmorale surveyとよばれ、面接と質問紙による方法が併用されることが多い。モラール・サーベイのおもな指標は、仕事および待遇についての満足度、上司に対する信頼度、所属集団と組織への帰属意識、本人の生活構造と性格特性などであり、主観的な態度であるモラールをありのままに測定するため、実施は第三者的機関に委託するのがよい。
[杉 政孝]
『尾高邦雄著『改訂 産業社会学』(1963・ダイヤモンド社)』▽『兼子宙編『経営の心理 第二巻 モラール――職場の心理』(1959・筑摩書房)』▽『渡瀬浩著『経営学全書36 経営社会学』(1970・丸善)』
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…日々の職業労働に対する人々の精励ぶりをいい,一般にモラールmoraleともいう。勤労意欲は他の多くの要因とともに,その時代,社会に広く流布した職業観によって規定されている。…
※「モラール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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