日本大百科全書(ニッポニカ) 「フォンデル」の意味・わかりやすい解説
フォンデル
ふぉんでる
Joost van den Vondel
(1587―1679)
オランダの詩人、劇作家。ドイツのケルンに生まれ、宗教戦争の結果、各地を転々としたのち、アムステルダムに落ち着く。ギリシア、ラテン語の古典文学に傾倒し、ホーフトの文学仲間に加わったが、浸礼派の新教からカトリックに改宗後この関係は絶えた。息子、娘、妻の死と家庭の不幸が続くなかで、政治家オルデンバルネフェルトの暗殺を扱った政治風刺詩や、肉親の死に寄せた叙情詩の数々を発表したが、とくに戯曲に優れ、32編の作品を残した。トロヤの大火災になぞらえた、没落直前のアムステルダムを救う英雄ヘイスブレヒトが出現し、市の繁栄を予言する戯曲『アムステルのヘイスブレヒト』(1637)は、1638年に市劇場設立記念に初演され、41年から1968年まで毎年新年に上演される習わしであった。そのほかおもな作品に、政治的色彩の濃い問題作『メアリー・スチュアート』(1646)、ミルトンの『失楽園』と並び称される『サタン』(1654)とその第二部『アダムの追放』(1664)などがある。
[近藤紀子]