日本大百科全書(ニッポニカ) 「カナリーチダイ」の意味・わかりやすい解説
カナリーチダイ
かなりーちだい / カナリー血鯛
bluespotted seabream
[学] Pagrus caeruleostictus
硬骨魚綱スズキ目タイ科マダイ亜科に属する海水魚。東部大西洋のポルトガルからアンゴラまで、カナリア諸島海域、地中海に分布する。体は卵形で強く側扁(そくへん)し、体高は高い。頭の前部外郭は強く湾曲し、吻部(ふんぶ)の傾斜は急である。眼下幅は広く、両眼間隔域は隆起する。上顎(じょうがく)の後端は目の前縁下、あるいはそれよりわずかに越える。犬歯は上顎前部に4本、下顎に6本あり、後方に向かって鈍くなり、だんだんと小さい2~3列の臼歯(きゅうし)になる。背びれ第1棘(きょく)と第2棘は短い。第3~5棘はもっとも長く、若魚では糸状に伸長する。腹びれの第1軟条は糸状に伸長する。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)に鱗(うろこ)がないか、小さい鱗が散在する。体は銀色の輝きのある桃色で、背側面に大きな青黒色の斑点(はんてん)がある。頭部、とくに眼隔域(左右の目の間隔域)は暗色。最後の背びれ軟条の基部に暗色点があるが、成長に伴って薄くなる。尾びれは桃色で、黒く縁どられる。他のひれは青色または桃色を帯びる。老成魚にはしばしば頭部と体の背面に多数の暗色斑が不規則に散在する。老成した雄は産卵期に頭部が黄色になる。最大体長は95センチメートルになるが、普通は50センチメートルのものが多い。水深150メートル以浅の岩、礫底(れきてい)に生息する。老齢魚ほど深みに、若魚は沿岸に多くみられる。強力なあごで二枚貝類をかみ砕いて食べ、また甲殻類や魚類なども食べる。一本釣り、延縄(はえなわ)、底引網などで漁獲される。鮮魚、冷凍、薫製、フィッシュミール(魚粉)、魚油などにされる。日本には冷凍で輸入され、マダイ、チダイ、チコダイの商品名で流通している。本種はチダイ属Evynnisからマダイ属Pagrusに移動し、学名もE. ehrenbergiiからP. caeruleostictusに変わった。
[尼岡邦夫 2018年1月19日]