日本大百科全書(ニッポニカ) 「かまいたち」の意味・わかりやすい解説
かまいたち
かまいたち / 鎌鼬
突然、皮膚が裂けて鋭利な鎌で切ったような切り傷ができる現象。昔は目に見えないイタチのしわざと考えられていたところから、このようにいわれたというが、他方、風神が太刀(たち)を構える「構太刀」から由来したという説もある。この発生は地域性があるらしく、越後(えちご)(新潟県)では七不思議の一つに数えられている。
語源はともかくとして、現在もこのような損傷を受ける人がいるので、この現象は否定できないが、この詳細な性質をまとめたのは三好想山(みよししょうざん)である。彼の著書『想山著聞奇集』全5巻(1850)によると次のとおりである。
(1)知らないうちに大きな疵(きず)ができる。初め血が出ず痛みもないが、あとからおびただしく出血し、痛みもひどい。
(2)最初疵口は白いが、のち黄色ににじんでくる。
(3)疵の長さは2、3寸より5、6寸、深さは5、6分より1、2寸。
(4)人の股(また)、膝(ひざ)、臑(すね)にできる。この現象は地を離れること1尺(約30センチメートル)と推定される。
(5)風に当たって切れるという説があるが、風がまったくなくても切れることがある。
(6)地域性がある。東海道では箱根の山路、天竜川、富士川、大井川、金谷(かなや)、小夜ノ中山(さよのなかやま)などが多い。
(7)袴(はかま)などの着衣によって「かまいたち」はいくぶん防がれている。
(8)水中でも「かまいたち」にかけられた例がある。
[根本順吉]