日本大百科全書(ニッポニカ) 「カライワシ」の意味・わかりやすい解説
カライワシ
からいわし / 唐鰯
Hawaiian ladyfish
tenpounder
[学] Elops hawaiensis
硬骨魚綱カライワシ目カライワシ科に属する海水魚。青森県以南の日本海沿岸、茨城県以南の太平洋沿岸、南西諸島、朝鮮半島、ハワイ諸島などインド洋から太平洋にかけて広く分布する。体は延長してやや側扁(そくへん)する。目には脂瞼(しけん)があり、口裂が大きく、後端は目の後縁より後方に達する。歯は小さくて粒状である。下顎(かがく)の下面中央に1枚の喉板(こうばん)がある。鰓条骨(さいじょうこつ)は非常に多く、27~35本。鱗(うろこ)は小さく、側線鱗(そくせんりん)数はおよそ100枚。すべてのひれに棘(とげ)がない。背びれは体の中央よりわずかに後方から始まり、背びれ基底長は臀(しり)びれ基底長よりも長い。臀びれは背びれよりも後方から始まり、腹びれは背びれの始部下方から始まる。尾びれの後端は深く二叉(にさ)する。体の背部は暗青色~緑灰色で、腹部は銀白色。ひれはかすかに黄色みを帯びることがある。暖海の沿岸域にすむ表層魚で、群れで活発に遊泳する。ラグーン(潟湖(せきこ))、湾、河口の汽水域や淡水域にもすむことができる。さまざまな魚や甲殻類を食べる。沖合いで産卵し、透明なレプトセファルス(葉形(ようけい)幼生)期を経て成長するが、幼生の尾びれは上下に二叉してウナギの幼生のようにとがらないのが特徴である。成長に伴って沿岸に移動する。体長1メートルになるが、普通は50センチメートルほど。スポーツフィッシングの対象魚として有名で、いろいろなルアーにヒットする。小骨が多くてあまり食用にしないが、ミンチにして利用することがある。同じカライワシ目のイセゴイ科のイセゴイに似るが、本種は最後の背びれ軟条が伸長しないこと、鱗が多いこと、背びれ基底長が臀びれ基底長より長いことなどで区別できる。
[浅野博利・尼岡邦夫 2019年2月18日]