イセゴイ(読み)いせごい(その他表記)Indo-Pacific tarpon

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イセゴイ」の意味・わかりやすい解説

イセゴイ
いせごい / 伊勢鯉
Indo-Pacific tarpon
[学] Megalops cyprinoides

硬骨魚綱カライワシ目イセゴイ科に属する海水魚。ハイレン(海菴)ともよぶ。新潟県以南の日本海沿岸、青森県以南の太平洋沿岸、屋久島(やくしま)、南西諸島、朝鮮半島、台湾などの近海、東アフリカ、紅海からオーストラリアやソシエテ諸島インド洋から西太平洋の熱帯海域に広く分布する。体は延長して側扁(そくへん)し、体高は中央部でもっとも高い。口は大きく、後端は目の後縁下方に達する。下顎(かがく)は吻端(ふんたん)よりも前方に突出する。歯は小さくて粒状である。下顎の下面中央に1枚の喉板(こうばん)がある。鰓条骨(さいじょうこつ)は26~27本。鱗(うろこ)は大きく、側線鱗(そくせんりん)数は30~40枚。背びれは体の中央部にあり、腹びれの始部上方近くから始まる。背びれの最後の軟条は糸状に伸びる。臀(しり)びれは背びれの後端よりも後方から始まり、その基底長は背びれ基底長よりも長い。尾びれは深く二叉(にさ)する。体の背部は青緑色で、腹側部は銀白色。暖海域にすむ沿岸魚であるが、ラグーン(潟湖(せきこ))や河口域にも侵入する。沖合いで産卵し、透明なレプトセファルス(葉形(ようけい)幼生)期を経て成長する。稚魚になると岸辺に移動するが、しばしば感潮域や沼地にも移動する。広範囲の塩分濃度に適応でき、低酸素水域でも空気呼吸ができるように浮き袋が変化している。おもに小魚甲殻類を食べる。全長55センチメートルになるが、普通は30センチメートルぐらいまでのものが多い。熱帯域では刺網(さしあみ)、引網延縄(はえなわ)などで漁獲される重要魚で、生魚、塩干し魚などで流通する。スポーツフィッシングの対象魚でもあるが、台湾では重要食用魚のサバヒーの稚魚を貪食(どんしょく)するので害魚扱いにされている。

[浅野博利・尼岡邦夫 2019年2月18日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イセゴイ」の意味・わかりやすい解説

イセゴイ
Megalops cyprinoides

カライワシ目イセゴイ科の海水魚。全長 1.5mになる。体は延長し側扁する。喉板があり,口,眼ともに大きい。尾鰭は深く二叉する。側線鱗数は 36~40で,カライワシに比べて鱗が大きい。体の背部は暗青色,腹部は銀白色。レプトケファルス型の幼生期を経る。沿岸性。インド洋,西部太平洋の暖海域に分布する。南方各地では食用となる。

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