カラムシ(読み)からむし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カラムシ」の意味・わかりやすい解説

カラムシ
からむし
[学] Boehmeria nivea (L.) Gaudich. var. concolor Makino
Boehmeria nipononivea Koidz.

イラクサ科(APG分類:イラクサ科)の多年草。茎は高さ1~2メートル。中部以下で枝を分け、繊維質で硬く、表面に伏した毛がある。葉は互生する点で日本産のヤブマオ属の他の種から容易に区別できる。葉には長い柄(え)があり、広卵形で普通、裏面に白い綿毛を密生するが、この毛がごく少ないもの(アオカラムシ)もあり、とくに本州の中国地方や近畿地方北部の山地にはこの型が多い。花序は葉腋(ようえき)から出て雌雄別となり、雌雄ともに円錐(えんすい)状で短い。本州から九州の低地・低山地に広く分布するが、かつて茎から繊維をとる目的で広く栽培されたために本来の分布域は明らかではない。中国名は伏毛苧麻。基本種のナンバンカラムシB. nivea (L.) Gaudich. var. niveaは全体により大形で葉が幅広く、茎の毛が開出する点で区別される。中国名は苧麻。中国大陸南部の原産と考えられ、日本では繊維をとるために栽培されて、それが野生化した所も多い。ラミーチョマ)はこのなかでとくに頑丈な栽培系統をさす。

[米倉浩司 2019年12月13日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カラムシ」の意味・わかりやすい解説

カラムシ
Boehmeria nivea

イラクサ科の落葉性多年草。マオ (真麻) ,チョマ (苧麻) とも呼ぶ。日本,マレーシア,インドに自生し,栽培もされる。地下に木質の根茎を伸ばして繁殖する。先端は地上茎となり高さ1~2mになる。広卵形で先がとがった葉が互生する。葉には鋸歯があり,裏に白い腺毛が密生する。夏から秋にかけて,花穂を葉腋につける。茎の下部に雄花穂,上部に雌花穂がつき,雄花は淡黄色で萼片とおしべ各4個をもつ。雌花は淡緑色で1花柱がある。茎からじょうぶな繊維がとれ船舶用綱,漁網,消火ホースなどのほか,小千谷縮などもつくる。変種のラミーは特に繊維植物として有名である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「カラムシ」の意味・わかりやすい解説

カラムシ

チョマ(苧麻)

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のカラムシの言及

【青苧座】より

…中世後期,繊維原料である青苧(カラムシ)の特権的な取引を行っていた商人座。青苧特産地であった越後国の府中,近江国の中継港坂本,青苧取引市場の京都や天王寺等の各地に成立し,三条西家を本所としていた。…

【麻織物】より

…おもなものに亜麻(フラックス。織ったものをリネンと呼ぶ),苧麻(ちよま)(ラミー,カラムシともいう),大麻(ヘンプ),黄麻(ジュート,つなそともいう),マニラ麻,サイザル麻などがある。麻類はそれぞれ相違はあるが,多くは繊維細胞が集まって繊維束を形づくっており,繊維束の繊維素以外に表皮や,木質部,ゴム質,ペクチン質などを含有しているので,より細かく分繊して糸にし織物にするのが良く,ロープ,紐類などは繊維束をそのまま撚り合わせて使用する。…

【チョマ(苧麻)】より

…栽培種には,葉の裏面に白毛が密生する白チョマと,毛のない緑チョマとがある。白チョマ(カラムシ)は古くから日本,中国など温帯で栽培され,繊維は良質。それに対し緑チョマはおもに熱帯で栽培され,繊維の品質は劣る。…

※「カラムシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

部分連合

与野党が協議して、政策ごとに野党が特定の法案成立などで協力すること。パーシャル連合。[補説]閣僚は出さないが与党としてふるまう閣外協力より、与党への協力度は低い。...

部分連合の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android