(読み)よう

精選版 日本国語大辞典 「葉」の意味・読み・例文・類語

よう エフ【葉】

[1] 〘名〙
① 木の葉のふちのようなとがった切込み。
※徒然草(1331頃)三三「閑院殿の櫛形の穴は、まろく、縁(ふち)もなくてぞありし〈略〉これはえふの入りて、木にて縁をしたりければ、あやまりにて、なほされにけり」
② 長い時代の中の一時期。代。
※東関紀行(1242頃)序「もとより金張七葉の栄えを好まず、ただ陶潜五柳の住みかを求む」 〔詩経‐商頌・長発〕
③ 住持の世代など、職や位を継いでその職・位にある期間、また、その人。
蔭凉軒日録‐長享三年(1489)一〇月一日「蓋建仁五葉茂秋柏弟子也」
④ 木の葉のように薄いもの。
※医語類聚(1872)〈奥山虎章〉「Lobe 葉(肺葉肝葉ノ如シ)」
[2] 〘接尾〙 木の葉・紙などのように薄いものや小舟を数えるのに用いる。
※和漢朗詠(1018頃)下「千株の松の下の双峯の寺 一葉の舟の中の万里の身〈白居易〉」

は【葉】

〘名〙 茎に側生する扁平な構造で、光合成・水分の蒸散・呼吸作用を営む主要な器官。表皮系・基本組織系・維管束系よりなり、葉身、葉柄、托葉などに分化する。葉身の形により単葉・複葉、あるいは普通葉、鱗片葉、苞葉などの区別がある。葉が本来の形・作用を変え、保護・貯蔵・生殖作用などを営む変態葉を呈すこともある。
※古事記(712)中・歌謡「狭井河よ 雲たちわたり 畝火山 木の波(ハ)騒ぎぬ 風吹かむとす」

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デジタル大辞泉 「葉」の意味・読み・例文・類語

は【葉】

植物の茎や枝につき、光合成蒸散を主な役割とする器官。秋に落葉するものと越冬するものがある。ふつう緑色で、葉身葉柄托葉の3部分からなり、葉身の形から単葉複葉とに分けられる。「青々とが茂る」「街路樹がを落とす」
[下接語]麻の葉いさ浮き葉枝葉枯れ葉きり一葉の葉照り葉一葉もとゆずり(ば)青葉明日あしたうらうわ押し葉落ち葉飼い葉貝割り葉かた葉・草葉朽ち葉言葉さかき獅子しし・慕い葉・下葉新葉すいすえ・一つ葉・ふたふる葉・ほん松葉丸葉三つ葉紅葉もみじば湯葉四つ葉若葉わくら(ぱ)菜っ葉
[類語]木の葉枝葉草葉葉っぱ押し葉葉身葉脈葉柄葉末托葉単葉複葉葉序双葉若葉若緑新緑万緑青葉紅葉こうよう紅葉もみじ黄葉照り葉落ち葉落葉枯れ葉朽ち葉病葉わくらば松葉

よう【葉】[漢字項目]

[音]ヨウ(エフ)(呉)(漢) ショウ(セフ)(呉)(漢) [訓]
学習漢字]3年
〈ヨウ〉
草や木のは。「葉柄葉緑素荷葉紅葉こうよう子葉枝葉霜葉単葉竹葉嫩葉どんよう落葉広葉樹
薄く平たいもの。「金葉肺葉胚葉はいよう前頭葉・複葉機」
重ね継ぐ世。時代。「後葉中葉末葉万葉
血筋などのわかれたもの。「末葉門葉
千葉ちば。「京葉
〈ショウ〉梵語の音訳字。「迦葉かしょう
〈は(ば)〉「葉陰葉巻青葉枝葉草葉言葉
[名のり]のぶ・ふさ
[難読]粘葉装でっちょうそう紅葉もみじ嫩葉わかば病葉わくらば

よう〔エフ〕【葉】

[名]木の葉のふちのような、とがった切れ込み。
「これは―の入りて、木にて縁をしたりければ」〈徒然・三三〉
[接尾]助数詞。
木の葉や紙など、薄いものを数えるのに用いる。「三の写真」「一の絵はがき」
小舟を数えるのに用いる。
「一―の舟の中の万里の身」〈和漢朗詠・下〉

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改訂新版 世界大百科事典 「葉」の意味・わかりやすい解説

葉 (は)
leaf

高等な植物(維管束植物)のからだは根,茎,葉の三つの基本的な器官から成り立っている。茎と根が軸性の器官であるのに対して,葉は茎に側生する器官で,平面的な広がりをもつ。コケ植物や藻類でも,植物体のうち平面的な構造を葉ということがあるが,維管束植物の葉と相同の器官ではない。コケや藻類の植物体を葉状体ともいうが,コケなどの葉は,形態学的に厳密にいえば葉的器官というべきものである。

葉にはさまざまの形のものがある。大きな葉としてはバショウやヤシの葉の例があげられるが,ウラジロカニクサのように葉が無限に展開していくものでは,数十mにも伸びる。小さい葉の例としてはウキクサの仲間の例や,コケシノブ科には0.5mmに達しないものもある。葉は葉柄と葉身からできており,托葉をもつものもある。葉柄petiole(stipe)は発達しないものもあるが,一見茎のようにしっかりしているものもある。毛や鱗片などの付属物をつけている場合も多い。葉身lamina(blade)の構成にも変化があり,単葉と複葉に二大別できる。単葉は葉身が単一の面でできたもので,辺縁は全縁のものから深く切れ込むものまでさまざまで,ほとんど中肋近くまで切れ込むものでは複葉との差がはっきりしない。複葉は,葉身が軸とそれから分岐した複数の面とでできているもので,構成にはいろいろのものがある。羽状複葉が最も多い例で,中軸とそれから羽状に分岐した羽軸を基本とする。エンドウのように1回羽状に分岐する複葉や,ナンテンのように2~3回羽状に分岐するものがあり,シダ植物の葉のように4~5回羽状分岐する複葉もある。掌状に分岐する例としてはシュロやクジャクシダなどがある(掌状複葉)。コシダ類の葉は叉(さ)状に分岐する軸と,そのうちのいくつかの部分の欠落と,羽状に分岐する小葉との組合せで,さまざまな型の構成を種や変種の差によって示している。被子植物の葉には葉柄の基部近くに托葉stipuleをつけるものがある。

 葉から変態してつくられた相同器官には,サボテンのとげ,エンドウなどの巻きひげ,ウツボカズラの漏斗状の補虫器官などいろいろの例があげられるが,最も顕著なものとしては,花被片をはじめとする花を構成する要素への変態があげられる。

被子植物の葉は,外側に1層(まれに多層になることもある。ムラサキツユクサなど)の表皮があり,おもに裏面に気孔がみられる。気孔は2個の孔辺細胞の間にできる穴であるが,孔辺細胞の周辺に助細胞など,特殊な細胞がつくられることもある。表皮細胞には葉緑体が含まれていないが,孔辺細胞には葉緑体がつくられる。シダ植物の葉も表皮の構造はよく似ているが,すべての細胞に葉緑体がある点で異なっている。表皮にはクチクラ層が発達しており,水分が過度に蒸散しないようになっている。表皮組織の下には長方形の細胞が密に整列した柵状組織があり,その内側には細胞間隙(かんげき)の発達した海綿状組織があって,それらの組織で光合成が行われる。これらの基本組織をひっくるめて葉肉と呼ぶことがある。シダ植物などの葉では,柵状組織と海綿状組織の差ははっきりしない。

 茎から葉が側生するとき,茎の維管束が枝分れする。茎から離れて葉柄へ入っていく維管束を葉跡leaf traceという。茎の維管束から葉跡が分出するとき,茎の維管束にできる間隙を葉隙leaf gapというが,原生中心柱の場合,葉隙はつくられない。葉跡は1本だけの場合もあるが,一つの葉柄に複数の葉跡が入るのがふつうで,その数は種によって一定していることと,不定のことがある。シダ植物などで,葉跡の数や構造が分類群のよい指標になることもある。葉跡は葉柄の維管束で,さらに枝分れする。複葉では中軸の維管束が分枝して羽軸に入り,枝分れして小葉や裂片の主脈となる。単葉の場合,葉跡はそのまま葉の中肋の維管束となり,それから枝分れした維管束が葉脈veinとなる。葉身にいろいろの模様をつくる葉脈は,葉へ入ってきた維管束とそれをとり巻く特殊な組織とでつくられる構造である。葉脈が葉身につくる模様を脈理venationという。脈理は植物群によって一定で,シダ植物では遊離脈といろいろの段階に発達した網状脈があり,いずれの場合も脈の末端は開放二叉分岐を基本としている。双子葉植物ではほとんどのもので複雑な網状脈をもっており,単子葉植物でも細脈は網目をつくるが,主脈は平行に走るので平行脈といわれる。ヒカゲノカズラ類の葉では脈は単生する。

葉は茎に側生するが,茎頂付近で茎の生長点よりやや下がった位置に葉原基leaf primordiumができる。葉原基は少し大きくなると上下の二つの部分がはっきりしてきて,下部の葉基からは葉鞘(ようしよう)と托葉,上部の上葉から葉身と葉柄がつくられる。葉鞘 leaf sheathは単子葉植物によくみられるもので,幼葉や生長点を保護している。双子葉植物には葉鞘は珍しいが,キンポウゲやナンテンなどには発達している。托葉は変化に富んでおり,まったく無いものもある。レンリソウ属の1種では,本葉が巻きひげになり,托葉が栄養器官になっている。単子葉植物には托葉をもつものは少なく,シダ植物には葉鞘も托葉も発達しない。葉身は上葉で原型がつくられ,辺縁生長がくり返されて完成され,葉が展開するときには,すでにできて畳み込まれていたものが,個々の細胞の生長につれて伸びてきて葉の形となる。なお苗条(シュート)の上での葉の配列のしかたを葉序phyllotaxisという。

葉には二つの種類があるというのが今日ほぼ定説となっている見方である。ヒカゲノカズラやミズニラの葉は小葉microphyllで,これはもともと茎の表面に突起状のものがつくられ,それが発達して維管束の分枝を受け入れるようになり,側生器官として完成されたものである。小葉は原則として葉脈が単生であり,葉跡は葉隙をつくらないといわれるが,例外がないわけではない。大部分の維管束植物の葉は,これに対して大葉megaphyllといわれる。大葉はもとは一つの苗条からつくられたものであるが,苗条から大葉への進化はテロム説telome theoryで説明される。原始陸上植物は1回ごとに分裂の軸が90度回転して,マツバランのような立体的な二叉分岐をした苗条をもっていたが,この1単位のテロム枝が,扁平化,単軸化,融合,単純化などの進化をくり返して葉となった。だから,1枚の大葉は1単位の苗条であり,脈はもともとの枝のなごりである。もちろん,葉脈は葉が完成されてからいろいろの模様をつくるように進化してきたものだから,網状にからみ合った苗条があったことはない。原初の葉はすべて遊離脈をもっており,石炭紀になって網状脈をもった裸子植物が進化してくる。

 大葉と小葉はその系統発生の過程が異なっているので,機能などはほとんど同じであるにもかかわらず,相同な器官とはいいがたい。すなわち,一方は苗条からできた葉であり,他方は茎の皮層などを主とした葉だからである。これら2種類の葉は,それぞれ異なった進化の道をたどってきた二つの植物群に別々に見られるもので,維管束植物には二つの系統群があるというのが現在では有力な説になっている。しかし,テロム説にしても,進化過程のすべてが実証的に示されたとはいえず,植物の進化にはまだ解明されていない問題も多いので,維管束植物に二つの系統群を認めるというのも仮説の域をでない。

 コケ植物のうちにも,たとえばスギゴケにみるように,維管束植物とよく似た葉的器官がみられ,記載用語では実際に葉といわれている。しかし,この葉は細胞層1層の構成で,中肋には維管束はみられない。個体発生でみれば,茎の先端にある三角錐形の頂端細胞が3方向に細胞を切り出し,そのうち1個の列が発達して茎を,他の2個が葉と呼ばれる構造をつくる。維管束植物の大葉,小葉のいずれも,形態形成の方法,系統発生において,まったく異なったものである。藻類の場合も,扁平な側生器官で光合成の機能の高いものを葉と呼ぶことがあるが,形態的に維管束植物の葉と相同のものではない。

植物が陸上へ進出してさまざまに進化したのは,陸上で生産の効率を高めたことに負う部分が大きいが,葉は光合成の主役を演じる構造であり,それだけに陸上における植物の多様化と機能上の進化に果たした葉の意義は大きいものがある。陸上の生活環境が多様であるのに対応させて,葉のかたちがさまざまに分化しているほか,常緑性と落葉性の樹木の差は葉の越冬法(または乾期に対する耐え方)の差によっているし,多年生草本のうち,夏緑性と常緑性の差も基本的には樹木の場合と同様である。海浜や乾燥地帯で多肉の葉が多かったり,渓流沿いで流線型の葉が進化してきたりするのも,環境に対する適応が,生活機能の最も高い葉に現れている例である。森林の階層構造も,個々の種の樹形も,光合成の効率を高めるように進化してきたものであり,葉の位置や構造が重要な役割を果たしている。それにもかかわらず,日常用語では,重要なことが〈根幹〉であり,〈枝葉末節〉の問題はとり上げるに足らぬこととされている。これは植物体を静的にみて,葉は中心から最も外れた存在であると解釈したもので,植物からみれば心外な表現かもしれない。

 植物と人間とのかかわり合いのうち,葉が生活と触れ合う部分は大きく,衣食住のすべてにかかわっている。植物の季節変化は花や実と同様葉が表現しており,若菜摘み,紅葉狩り,落葉たきをはじめ,柏餅,草餅,早苗,ささ舟と,葉に関するものをあげればきりがない。最近では都会で緑の乏しい生活環境が多くなったために,観葉植物のブームといわれ,人間の潜在的な緑への欲求が,葉との触れ合いを求めることではからずも表に出てきているともいえる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「葉」の意味・わかりやすい解説



leaf

植物の器官の一つ。普通は茎の周りに規則的に配列し、光合成を行う扁平(へんぺい)な形をもつ緑色の器官である。しかし、なかには光合成の機能をもたない葉、扁平ではない葉などさまざまなものがある。

[原 襄]

普通葉

(1)葉身・葉柄(ようへい)・托葉(たくよう) 光合成を行う緑色の葉を普通葉とよぶ。普通葉には、葉身と葉柄と托葉の三つの部分が区別されるが、このすべての部分を備えている葉を完全葉、このうちの一つまたは二つの部分を欠く葉を不完全葉とよぶ。葉身は、普通、平面的な形で日光を受けやすく、葉の主要な働きである光合成を活発に行う部分である。葉柄は茎と葉身を連絡する部分であるとともに、この部分がその成長過程で適当にねじれて、葉身を日光のくる方向に向ける働きももつ。托葉はシダ植物や裸子植物にはなく、被子植物のうち、とくに双子葉植物に多くみられる。普通、托葉は葉の基部に1対あり、若い葉身を保護する役割をもつと考えられるものが多い。また、葉の基部の托葉に相当する部分が葉鞘(ようしょう)となるものも多く、葉鞘と托葉との関係が問題とされることもある。

(2)単葉と複葉 葉は、葉身の部分の形から、単葉と複葉とに区別することができる。単葉とは葉身が一つの葉状の部分からなる葉であり、複葉とは葉身が複数の葉状の部分、すなわち小葉に分かれている葉をいう。一般に葉柄から葉身の中央を通って葉の先端に至る部分を葉軸というが、複葉のうち、葉軸を挟んで複数の小葉が左右に並ぶものを羽状複葉といい、このうち、先端に小葉のつくものを奇数羽状複葉、先端に小葉がないものを偶数羽状複葉とよぶ。また、葉柄の先端に小葉が放射状に三つ以上つくものを掌状複葉とよぶ。

 複葉の小葉の1枚と単葉の1枚とはよく似ている場合がある。とくにフジ、バラなどの奇数羽状複葉は1本の枝につく単葉と似ている。しかし、単葉であるか、複葉の小葉であるかの区別は、腋芽(えきが)によって知ることができる。腋芽は1枚の葉の葉腋につくものであり、小葉と単葉は、腋芽のつく位置、葉柄と茎との組織の相違などによって区別できる。

 単葉の葉身、小葉の小葉身には線形、針形、円形、卵形などさまざまな形がある。また、葉の周縁に鋸歯(きょし)(ぎざぎざ)のあるもの、欠刻(切れ込み)のあるもの、鋸歯も欠刻もないもの(全縁とよばれる)などがある。なお、一つの個体に形や大きさの著しく異なる葉があるとき、これを異形葉とよぶ。

(3)葉脈 葉には、葉の中における物質の移動に役だつ葉脈がある。葉脈は次のように大別される。おもな葉脈から比較的細い葉脈に至るまで葉脈が網目をつくる場合を網状脈とよび、このうち、おもな脈が羽状となる場合を羽状脈、おもな脈が掌状に分かれる場合を掌状脈とよぶ。また、おもな葉脈が平行となる場合を平行脈、葉脈が二又に分かれることを繰り返す場合を二又脈とよぶ。網状脈は双子葉植物に多く、平行脈は単子葉植物に多い。また、二又脈は、多くのシダ類と裸子植物のイチョウにみられる。

(4)葉の組織 普通葉が光合成を行うことから、普通葉の組織には、光合成を行う葉緑体を顕著にもつ葉肉(葉肉組織)が目だつ。もっとも普通の場合、葉の横断面をつくってみると、いちばん上に上側の表皮、その下に葉肉組織の一つである柵状組織(さくじょうそしき)、ついで同じく葉肉組織の海綿状組織、そしていちばん下に下側の表皮がある。表皮のところどころには気孔があり、特別の形をもった二つの孔辺細胞に囲まれている。気孔は葉の下側に多い。孔辺細胞の働きによって気孔が開閉し、光合成、呼吸、蒸散といった植物体内と外界との間のガス交換が行われる。葉肉組織の細胞間には、豊富な細胞間隙(かんげき)(空気間隙)があり、葉の組織の細胞はこの間隙と気孔を通して外界との気体の交換を行うことができる。

[原 襄]

普通葉以外の葉

葉には、普通葉のほかに、植物体の最初の葉である子葉、シュート(苗条(びょうじょう))の比較的下につく低出葉、シュートの上のほうにつく高出葉がある。芽を包む鱗片(りんぺん)葉は低出葉の一つであり、花を葉腋に抱く包葉は高出葉である。花の構成要素である萼片(がくへん)、花弁、雄しべ、心皮も葉に類するものと解釈することができる。このように、普通葉をはじめとして葉に類するものをまとめて葉的器官とよぶことがある。サボテン類の針は形態学的には短枝の葉に相当するとみられるところから、葉的器官の一つとして扱われ、葉針とよばれる。メギの針も葉針である。しかし、ニセアカシアの針は托葉に相当するものであり、エンドウの巻きひげは葉身の一部に相当する。

[原 襄]

葉の寿命

幼い葉は、芽の中で、種類によってさまざまな形に巻いている(幼葉態という)が、芽の展開に伴って平面的な形となるのが普通である。展開のあとの普通葉の寿命は、落葉樹であれば春から秋の紅葉までの期間であるが、常緑樹では1年から数年のものまでとさまざまである。マツ属のある種では、針状葉が40年近くも生きていると報告されているし、アフリカの砂漠に生育する風変わりな裸子植物であるウェルウィッチアは終生伸び続ける1対の葉をもち、しかも、それが1000年を超える寿命をもつといわれている。

[原 襄]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「葉」の意味・わかりやすい解説



leaf

植物体を構成する主要器官の一つ。平らで薄い構造で,茎から重なり合わないように側出するのが典型的な型である。主として光合成や蒸散作用などを営む。茎頂分裂組織から外生的にこぶ状の葉原基として発生し,普通その生長は有限である。本来の機能を営む葉を普通葉または同化葉といい,このほか胚に生じる最初の葉である子葉,冬芽の外側をおおう鱗片葉とか,花の下につく包葉,萼片,花弁,おしべなど花を構成する成分 (花葉という) も,すべて元来は葉の変形とみなせる。
普通葉は葉身,葉柄,托葉の3部分から成るが,葉柄,托葉の両者またはいずれか一方を欠く場合もある。葉の全体の形,葉先,葉縁,葉脚および葉質,色つや,毛の状態など多種多様で分類学上重要な形質とされる。また単一の葉身から成る葉を単葉,いくつかの小葉に分れたものを複葉という。葉は表皮,葉肉,葉脈から成る。表皮はろう質やクチクラに被膜され,気孔,水孔,毛などを分化する。葉肉は葉緑体を含む同化組織から成り,光合成を営む。葉脈は維管束組織で,葉肉内に水その他を送り,また同化産物を集めてほかの場所へ運ぶ。葉はまた巻ひげ,針,捕虫嚢などに変形していることがある。
葉は春から夏にかけて葉緑素を他の色素よりも圧倒的に多くもっている。しかし秋になると,葉における物質合成の働きが衰え,葉緑素はこわれて白くなるため,他の色素が現れはじめる。カロテノイド (黄色) ,キサントフィル (薄い黄色) ,アントシアン (液汁が弱酸性なら赤,弱アルカリ性なら青みがかった色,中性ならその中間の色) ,ベータシアニン (赤) などである。葉は本質として短命なものである。針葉樹や常緑広葉樹などの葉は2~3年生延びるが,1年目以降はその植物に対してかなり貢献度が低いとされている。落葉は,葉身の基部や葉柄の付け根に離層と呼ばれる特殊な細胞層がつくられ,この部分で生じる。離層は,昆虫による食害,病気,乾燥などの理由で,葉が重い損傷を受けたときに形成される。秋に起る自然の離層形成は,日長が短日になることが原因である。おそらく,短い日照時間が,老熟による変化を早めるためであろう。その結果,葉柄部分の細胞が柔らかくなって,葉が落ちる。葉が落ちた跡にはやがてコルク質の癒創層が形成され,傷口をふさぐ。あとに残った葉痕は,冬期に小枝から樹木の種類を特定するのに役立つ。


よう
lobe

生物学上の種々の器官ではっきりした境界線によって2つ以上の部分に分れている場合に,その1つを葉という。たとえば肝臓は右葉と左葉に分れ,大脳は前頭葉,側頭葉,後頭葉などに分けられている。

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百科事典マイペディア 「葉」の意味・わかりやすい解説

葉【は】

シダ植物,顕花植物に見られる主要な器官の一つ。ふつう,茎に側生し,光合成を営み,蒸散作用などを行う。葉は葉身,葉柄,托葉の3部からなるが,葉柄や托葉を欠くものもある。葉身には単葉と複葉の別があり,葉の輪郭にも変化が多く,植物群によって主葉脈やこの間を結ぶ細脈の性質が異なる。 葉身の表面にはふつう1層の細胞からなる表皮があり,その外側にはクチクラがあって内部の保護,蒸散の防止などを行い,表皮には気孔があって,蒸散作用,ガス交換を営む。葉肉はふつう上部の柵(さく)状組織と下部の海綿状組織に区別され,ともに葉緑体をそなえて光合成を行い,生長・繁殖に必要なデンプン,糖などを作る。葉脈は水や養分の通路,骨格となる。葉は光合成に適するように,すべてが光を受けるよう配列されるが,この配列を葉序という。 托葉は葉柄上またはその基部につき,幼い葉の保護などを行い,種によって異なり,シダ植物,裸子植物ではほとんどない。また葉は鱗片,巻きひげとげなどに変態することも多い。なお葉の寿命はふつう1年以内であるが,数年まれに数十年となるものもある。
→関連項目表皮

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図書館情報学用語辞典 第5版 「葉」の解説

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「葉」の解説

ツリー構造において、子のない節(つまりその枝の末端)のことをいう。たとえば、ファイルシステムのディレクトリ構造でいうと、ファイルのこと。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「葉」の解説

葉 (カシワ)

学名:Quercus dentata
植物。ブナ科の落葉高木,園芸植物,薬用植物

葉 (モミジ)

植物。カエデ科の木本類,とくに高雄紅葉の別称

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【衣帯】より


[袈裟]
 袈裟の本旨は,粗末な端裂(はぎれ)をはぎ合わせた僧衣ということなので,その精神を形に示して,数枚の裂をつないで作った一条をさらに数条ならべて縫った形をとる。そのつなぎ目の部分と四周の部分に別の裂を配したものが多く,前者を葉(よう),後者を縁(えん)と称し,縁葉に囲まれた部分を田相(でんそう)また甲(こう)と称する。なお,全部同じ裂で作った無地のものや,つなぎ目に金色,朱色などの線を配しただけのものもあり,禅系諸宗では多くこれらを用いる。…

【茎】より

…シダ植物と顕花植物(両者を合わせて維管束植物という)の体の部分のうち,葉や芽をつける軸状構造の器官である。樹木の幹は主茎が二次肥厚したものでその顕著な例は屋久杉やセコイアの巨木にみられるが,一方シダ植物の根茎のように地中にあって目立たないものもある。…

【植物】より

… 動物と植物の差を簡単に定義することは難しい。動物は従属栄養で,自然界の物質循環の消費者,分解者の地位を占めるが,植物のうちでも,菌類は葉緑素をもたずに従属栄養の生活をしており,基本的には分解者である。被子植物のうちにも,ギンリョウソウやツチトリモチのように,二次的に腐生あるいは寄生生活をするようになったものがあり,すべてが生産者であるとはいいきれない。…

※「葉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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