カランコエ(読み)からんこえ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カランコエ」の意味・わかりやすい解説

カランコエ
からんこえ
[学] Kalanchoe

ベンケイソウ科(APG分類:ベンケイソウ科)の多年生の多肉植物。マダガスカル島、アフリカなど熱帯に広く分布する。紅弁慶(べにべんけい)とよばれるブロスフェルディアーナK. blossefeldiana V.Poelln.の園芸品種が広く栽培され、カランコエと通称されている。花は4弁で花柄の先に房状に多数つく。近年は品種改良が進み、桃、赤、橙(だいだい)、黄色など花色も豊富になり、矮性(わいせい)の鉢物用が多数ある。植物特許がある品種もあり、これは自家増殖が禁じられている。繁殖は実生(みしょう)、挿葉で容易にできるが、普通は挿葉による。6月ごろ川砂に挿し、半日陰にすると3週間ほどで発根する。発根後3号鉢に移植し、8~9月に摘芯(てきしん)すると多数分枝し、翌春には開花する。寒さには比較的強く、0℃くらいまで耐えるが、冬期は室内で育てる。性質もじょうぶで、日当りと水はけのよい土でよく育つ。

[金子勝巳 2020年3月18日]

 カランコエの原種の産地はマダガスカル島北部のツァラタナナ山(2880メートル)で、フランスの探検隊が発見した。そしてドイツの植物学者フォン・ポエルニッツが新種と認め、輸入と栽培に関係したブロスフェルド商会を記念して、1934年に学名ブロスフェルディアーナをつけた。改良はドイツで始まり、アメリカのドーエルンハイム社が作出した矮性のトム・サム系が普及した。

[湯浅浩史 2020年3月18日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カランコエ」の意味・わかりやすい解説

カランコエ
Kalanchoe

ベンケイソウ科多肉植物。カランコエ属はマダガスカルを中心に,アフリカから沖縄にいたる熱帯・亜熱帯地域に約 110種分布するが,日本でカランコエの名で最も多く流通しているのは,マダガスカル北部のツァラタナナ山脈に稀産するカランコエ・ブッロスフェルディアーナ K.blossfeldianaの園芸品種である。多肉質の葉は卵形で対生。直径8~10mmほどの小花が集って茎頂に集散花序を形成する。第2次世界大戦前に,ドイツのブロスフェルト商会から売出されたため,この名がある。現在は短日処理による開花調整で,周年出回る鉢花となっている。耐寒性はあまりなく,冬も5℃以上に保つ。繁殖は挿木によって行われる。排水のよい用土に植え,日当りのよい場所で育てる。カランコエ属はほかに,釣鐘形の花が垂れ下がるエンゼルランプと呼ばれる系統 (K.uniflorumK.prophyrokalyxなどの雑種) や,セイロンベンケイソウなども流通している。セイロンベンケイソウは葉縁に不定芽が形成され,天然のクローン植物としても観賞価値が高い。ハカラメ (葉から芽) とも呼ばれている。

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