日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルマパ」の意味・わかりやすい解説
カルマパ(17世)
かるまぱ
Karmapa
(1985― )
カルマパとは、チベット仏教(ラマ教)四大宗派の一つであるカギュ派の最高位、チベット仏教全体では第三位の高僧である(最高位はゲルク派のダライ・ラマ。第二位はゲルク派のパンチェン・ラマ)。カルマパ・ラマともいう(ラマはチベット語で師匠、上人(しょうにん)の意)。チベット仏教では転生活仏(てんしょうかつぶつ)という生まれ変わり制度を実施しており、活仏の死後には転生者を探索して後継者とする。カルマパは現在で17世まで続いている。カギュ派の総本山は中国チベット自治区にあるツルプ寺。
17世(ウゲン・ティンレー・ドルジェUgyen Trinley Dorje)は東チベットに住む遊牧民の両親のもとに生まれる。先代である16世(1924―1981)は1959年に中国から亡命し、1981年シカゴで死亡。17世は1992年にカルマパの生まれ変わりとしてみいだされ、ダライ・ラマ14世と中国政府の双方から承認を受け、ツルプ寺に身を置くことになった。しかし、中国政府にインド訪問の要望を出しても許可が下りないことや訪問客や信者への面会を制限されるなど、信仰の自由が中国国内では認められないとして、1999年12月28日、中国政府に無断で中国を脱出、翌2000年1月5日、チベット亡命政府のあるインド北部ダラムサラに到着した。カルマパの行動は「亡命」と報道されたが、中国政府は「カギュ派が使う『儀式の道具を外国に探しに行った』とする置き手紙があった」と発表して、亡命とは認めようとしなかった。17世は2001年2月にインド政府から正式に難民としての滞在資格を付与された。
[編集部 2017年4月18日]
『田中公明著『活仏たちのチベット――ダライ・ラマとカルマパ』(2000・春秋社)』