勅令
ちょくれい
明治憲法下において、天皇によって制定された命令(法形式の一つ)の総称。天皇は統治権を行使する地位にあり、そのため内閣の輔弼(ほひつ)により勅令を発することができたのであるが、その形式も、現在認められている執行命令、委任命令のほか、独立命令や緊急命令を発することができた。そして内閣総理大臣が主任の国務大臣とともにこれに副署した。また、大権事項が広範に認められたことの結果として、勅令で定めうる事項もきわめて広かった。日本国憲法は勅令を認めていない。そのため、現行憲法施行の際に効力をもっていた勅令のうち、法律で規定しなければならない事項を内容とするものについては、経過的措置として、一定期間暫定的効力を認められた。
[池田政章]
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勅令
ちょくれい
大日本帝国憲法のもとで,天皇によって制定された法形式の一種。天皇がその大権に基づき,議会の審議を経ず,国務大臣の輔弼 (ほひつ) のみによって制定,施行することができた。日本国憲法のもとでは,これに相当するのは政令であるが,法律から独立した独立命令の性質をもつことは民主主義と法治主義の観点から許されていない。
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ちょく‐れい【勅令】
〘名〙
①
天子の命令。勅命。〔広益熟
字典(1874)〕 〔
宋史‐哲宗紀〕
② 旧憲法下の法形式の一つ。一般の国務に関し、天皇の発した命令で、帝国議会の協賛を経ないもの。緊急勅令など。
※大日本帝国憲法(明治二二年)(1889)五五条「法律勅令
其の他国務に関る
詔勅は」
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ちょくれい【勅令】
大日本帝国憲法の下での命令のうち,天皇により親裁されたもの。法律に次ぐ重要な法規で,当初は公文式(1886公布)によって,のちには公式令(1907公布)によって定められた法形式である。公式令によれば,勅令は,法律と同様に上諭を付して公布され,天皇の署名・捺印の後,内閣総理大臣の単独または他の国務各大臣もしくは主任の国務大臣と連名の副署がなされた。勅令の形式的効力は法律に劣るとされた。勅令には,法律を執行するための執行命令や法律の委任に基づく委任命令のほか,法律とは独立に出される独立命令と,帝国議会の閉会中に緊急臨時の必要がある場合に出される緊急勅令とがあった。
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