字通「勅」の項目を見る。
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大日本帝国憲法の下での命令のうち,天皇により親裁されたもの。法律に次ぐ重要な法規で,当初は公文式(1886公布)によって,のちには公式令(1907公布)によって定められた法形式である。公式令によれば,勅令は,法律と同様に上諭を付して公布され,天皇の署名・捺印の後,内閣総理大臣の単独または他の国務各大臣もしくは主任の国務大臣と連名の副署がなされた。勅令の形式的効力は法律に劣るとされた。勅令には,法律を執行するための執行命令や法律の委任に基づく委任命令のほか,法律とは独立に出される独立命令と,帝国議会の閉会中に緊急臨時の必要がある場合に出される緊急勅令とがあった。軍の統帥事項に関する規定で内閣総理大臣の副署を要しない軍令も,広い意味での勅令である。独立命令としては,〈公共ノ安寧秩序ヲ保持シ及臣民ノ幸福ヲ増進スル為ニ必要ナル〉警察命令(大日本帝国憲法9条)に加えて,官制および官吏令,軍制令,栄典令,恩赦令,公式令,貴族院令が憲法で認められており,政府に広範な権限を与えていた。緊急勅令には,暫定的な法律の性質をもつ立法的緊急勅令(8条)と緊急の財政処分をなす財政的緊急勅令(70条)の2種があり,政府権力を強化していた。とりわけ敗戦直後(1945年9月20日)の〈ポツダム緊急勅令〉(「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件)は,連合国最高司令官の要求を実施するためにとくに必要な場合には,命令の形式(ポツダム命令)で所要事項を定めかつ罰則を設けることを認めることにより政府に白紙的に授権し,これに基づき公職追放(ポツダム勅令による)や団体規制(ポツダム政令による)などの占領政策が強権的に遂行された。なお,日本国憲法の下では,独立命令や緊急勅令はいっさい認められない。
執筆者:横田 耕一
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明治憲法下において、天皇によって制定された命令(法形式の一つ)の総称。天皇は統治権を行使する地位にあり、そのため内閣の輔弼(ほひつ)により勅令を発することができたのであるが、その形式も、現在認められている執行命令、委任命令のほか、独立命令や緊急命令を発することができた。そして内閣総理大臣が主任の国務大臣とともにこれに副署した。また、大権事項が広範に認められたことの結果として、勅令で定めうる事項もきわめて広かった。日本国憲法は勅令を認めていない。そのため、現行憲法施行の際に効力をもっていた勅令のうち、法律で規定しなければならない事項を内容とするものについては、経過的措置として、一定期間暫定的効力を認められた。
[池田政章]
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