日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガウル」の意味・わかりやすい解説
ガウル
がうる
gaur
[学] Bos gaurus
哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目ウシ科の動物。別名インドヤギュウ、セラダンseladangとよばれる。インド、ネパール、ミャンマー(ビルマ)からインドシナにかけて分布し、森林のある高地に生息する。野生のウシ科動物のうち最大の種類として知られ、体長3メートル、体高2メートル、尾長85センチメートルで、体重は1000キログラムに達する。体形はウシに似るが、肩から背の中央部まで隆起が発達し、きわめて頑丈なつくりをしている。角(つの)は雌雄ともにあり、上内方に湾曲し、長さ76センチメートルに達する。体色は、雄の成獣では濃褐色あるいは黒色、雌や子は赤褐色で、体毛は短く、成獣の雄ではほとんど裸出する。四肢の先端部分は、いずれも白色である。
群れをなして生活するが、普通5~6頭、多くても二十数頭の小群である。日中は森の中や茂みで休息し、朝や夕方に行動する。食性は草食で、草を主とするが、タケノコなども好食することが知られている。体が大きいわりにはおとなしく用心深い動物であるが、追い詰められたり傷を負ったりすると、きわめて危険な動物になる。交尾は乾期に行われ、ほぼ9か月の妊娠期間を経て、9~10月に1子を産む。この時期はモンスーンの季節にあたり、新鮮な草が十分にあって幼獣の哺育には適している。鳴き声は家畜のウシに近い。
近似種として、ミャンマーに分布するガヤルB. frontarisがあるが、学者によっては本種の畜用種とみなしている。
[中川志郎]