同位体を分離・濃縮する方法の一つ.ガス分子の壁面衝突数は,ある一定の圧力で分子量の小さいもののほうが多く,分子量の平方根に逆比例する.ガス分子が平均自由行路に比べて小さい径の孔を透過する速度は,分子量の平方根に逆比例する.ウランの同位体の場合,235U と 238U をUF6の形で分離することが可能で,その分離係数は1.004である.1946年,オークリッジ研究所で 235U の濃縮に成功し,以来,工業規模での唯一のウラン濃縮法として,アメリカ,ロシア,フランス,中国で採用されている.1段の分離係数が小さいので,5%濃縮ウランを製造するために900段程度必要となり,回収段も含めると1500段程度の大規模な設備になる.経済的には各段ごとに設置する,圧縮機と熱交換器が大きな要素となっている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 235Uと238Uとは,核的特性がまったく異なり,1原子当りの重さもわずかに異なるが,ともにウラン元素としての共通した化学的特性を有するため,通常の分析化学的な操作では,実際上,両者を濃縮・分離することはできない。上記5ヵ国が最初に採用したウラン濃縮の方法は,いずれもガス拡散法または隔膜法と呼ばれるものであった。この方法は,ウランを気体状の化合物である六フッ化ウランUF6にし,この気体を隔膜と呼ばれるきわめて微細な貫通孔を有する多孔性物質中を通して低圧側に噴き出させると,隔膜を透過してきたUF6中の235Uの比率が,透過せずに高圧側に残っているUF6中の比率にくらべてわずかに高いことを利用するものである。…
…以下にその代表的な例を述べる。(1)ガス拡散法 分子量の異なる2種類の気体が共存するときその運動エネルギーは等しいので,各成分ガスの平均速度はガス分子の分子量の平方根に逆比例する。したがって質量の大きい分子のほうが平均速度が小さい。…
※「ガス拡散法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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