ガス拡散法(読み)ガスカクサンホウ

デジタル大辞泉 「ガス拡散法」の意味・読み・例文・類語

ガスかくさん‐ほう〔‐クワクサンハフ〕【ガス拡散法】

濃縮ウラン製造法の一。天然ウランをガス状の六弗化ふっかウランに変え、超微小孔をもつ隔膜を通し、透過率のわずかな差を利用して、ウラン235と238を分離し、235の比率を約90パーセントまで高める。

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精選版 日本国語大辞典 「ガス拡散法」の意味・読み・例文・類語

ガス‐かくさんほう‥クヮクサンハフ【ガス拡散法】

  1. 〘 名詞 〙 核燃料である濃縮ウランを製造する方法一つ。天然ウランをガス状の六フッ化ウランに変え、超微小孔を数億個あけた隔膜を通してウラン二三五と二三八を分離する方法。

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化学辞典 第2版 「ガス拡散法」の解説

ガス拡散法
ガスカクサンホウ
gas diffusion method

同位体を分離・濃縮する方法の一つ.ガス分子の壁面衝突数は,ある一定の圧力分子量の小さいもののほうが多く,分子量の平方根に逆比例する.ガス分子が平均自由行路に比べて小さい径の孔を透過する速度は,分子量の平方根に逆比例する.ウランの同位体の場合,235U と 238U をUF6の形で分離することが可能で,その分離係数は1.004である.1946年,オークリッジ研究所で 235U の濃縮に成功し,以来,工業規模での唯一のウラン濃縮法として,アメリカ,ロシア,フランス,中国で採用されている.1段の分離係数が小さいので,5%濃縮ウランを製造するために900段程度必要となり,回収段も含めると1500段程度の大規模な設備になる.経済的には各段ごとに設置する,圧縮機と熱交換器が大きな要素となっている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガス拡散法」の意味・わかりやすい解説

ガス拡散法
ガスかくさんほう
gaseous diffusion method

天然ウランから核分裂性同位体のウラン235を分離し,その存在比を高めるウラン濃縮法の一つ。分子量の軽いウラン235のほうが,重いウラン238より早く拡散することを利用する。天然ウランを六フッ化ウランに変え,高圧にして,細かい気孔の開いた多孔質の隔膜を何層も置いたところに強制的に通すと,分子量の軽いウラン235のほうが隔膜の外に流出しやすい。このような過程を 500段ほど繰り返すと,97~98%という高濃度のウラン235が得られる。巨大な規模の工場と大量の運転用電力を必要とし,ひいては生産コストが高くなることが欠点とされ,これに代わる遠心分離法も始められている。(→ウランウラン濃縮

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世界大百科事典(旧版)内のガス拡散法の言及

【ウラン濃縮】より

… 235Uと238Uとは,核的特性がまったく異なり,1原子当りの重さもわずかに異なるが,ともにウラン元素としての共通した化学的特性を有するため,通常の分析化学的な操作では,実際上,両者を濃縮・分離することはできない。上記5ヵ国が最初に採用したウラン濃縮の方法は,いずれもガス拡散法または隔膜法と呼ばれるものであった。この方法は,ウランを気体状の化合物である六フッ化ウランUF6にし,この気体を隔膜と呼ばれるきわめて微細な貫通孔を有する多孔性物質中を通して低圧側に噴き出させると,隔膜を透過してきたUF6中の235Uの比率が,透過せずに高圧側に残っているUF6中の比率にくらべてわずかに高いことを利用するものである。…

【同位体分離】より

…以下にその代表的な例を述べる。(1)ガス拡散法 分子量の異なる2種類の気体が共存するときその運動エネルギーは等しいので,各成分ガスの平均速度はガス分子の分子量の平方根に逆比例する。したがって質量の大きい分子のほうが平均速度が小さい。…

※「ガス拡散法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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