アッラー(その他表記)Allāh

デジタル大辞泉 「アッラー」の意味・読み・例文・類語

アッラー(〈アラビア〉Allāh)

イスラム教における全知全能唯一神。天地万物創造主。聖典コーランには人的表現もみられるが、その図像化は厳しく禁止されている。「アラー」はなまった言い方。

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精選版 日本国語大辞典 「アッラー」の意味・読み・例文・類語

アッラー

  1. アラー

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改訂新版 世界大百科事典 「アッラー」の意味・わかりやすい解説

アッラー
Allāh

イスラムにおける唯一なる神の呼称。語源的には,アラビア語で神を意味するイラーフilāhに,定冠詞al-が付加されたal-ilāh(the God)が同化してアッラーフ(アッラー)Allāhになったといわれる。日本ではアラーとも呼ばれる。イスラムの教義では,この神は天地創造以前の永遠の昔から,永遠の未来にわたって存在するものであるが,歴史的にみれば,すでにイスラム以前のアラブの間に知られていたことが,碑文や人名やコーランの記述などから知られる。とくにアッラーはメッカの人々の間では至上神として信仰されていた(コーラン106章)。ちなみに預言者ムハンマドの父の名はアブド・アッラー`Abd Allāh(アッラーのしもべ)であった。アッラーに次いでよく用いられる呼称にラッブrabb(主)があり,そのほかに,神の性質を表す名として〈慈悲深きお方al-Raḥmān〉〈慈愛あまねきお方al-Raḥīm〉などのような呼称もある。神学者はアッラーを神の本質を示す本質名ism al-dhātとそれ以外の属性を表す属性名asmā'al-ṣifātとを区別する。これらの属性名は,後に99の神の美名としてまとめられ,数珠とともにジクルで用いられる。

 コーランの中で繰り返し強調されていることは〈汝らの神は唯一なる神〉(22:34)という一神教の原理である。全知全能なるアッラー以外に,天地万物創造者・支配者はいないということであり,アッラー以外のすべてのものは神の被造物である。このように神の力は普遍であり,この世に存在し生起するもので一つとして神の意志と力によらないものはない。神が一つであるということは,万物の主たることにおいてそれだけで十分であり,伴侶も助力者も必要としない〈並ぶものなき神〉(42:11)ということである。神の無比性ということは,神の超越性を意味する。神が超越者であるということは,空間的・時間的な意味においてではない。神はその本質において被造物からの類推をいっさい拒否する存在だということである。このようにコーランでは神と被造物との隔絶性が強調される一方,神は〈各人の頸の血管よりも近く〉(50:16)にあり,人間の言葉で人間のように自己を語り,また人間のように見たり聞いたり,喜んだり怒ったり,思い直したりもする人間的な神として描かれている。このような神の超越性と人間(人格)性という相矛盾するような両側面をいかに調和的に解釈するかで,さまざまな神学上の相違を生んだ。この神はまた,悪人を罰し,信仰し行い正しい者にはよい報いを与える義の神である。しかし,同時に〈悔い改めて帰ってくる人々は,すべてを快く赦し給う〉(17:25)慈悲深き神でもある。かと思えば,〈(神は)御心のままにある者を迷いの道に陥れ,また御心のままにある者を正しい道に導き給う〉(14:4),〈天と地の主権は神に属す。誰を赦し,誰を罰するかもすべては御心次第である〉(48:14)とも言っている。これは神の恣意性を示すものではなく,むしろ神の絶対的自由,究極の点では神は人間理性の尺度を超えた存在であることを表現したものにほかならない。しかし,それだけに神の正義と悪の問題,神の絶対的力と人間の自由意志,道徳的責任の問題をどのように調和させるかが後に神学上の大きな問題となる。
イスラム
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アッラー」の意味・わかりやすい解説

アッラー
あっらー
Allāh

イスラム教における唯一神の名。語源的には、神を意味するイラーフilāhに定冠詞al-がついた「アル・イラーフ」がなまったもの。すでにイスラム以前からアッラーは至上神として崇拝されていた。しかしイスラム教では、その信条告白に「アッラーのほかに神なし」とあるとおり、アッラー以外にいかなる神も認めない。またコーランに、「神は美しい名前をもっている。それらを使って神に祈れ」(7章180節)とあり、神は「主」(ラッブ)、「慈愛深き者」(ラフマーン)などさまざまな名でよばれている。ハディース(伝承)によると、神は99の名をもつといわれるが、アッラーは、他のすべての名を含む最高の名であり、また神の固有名詞でもある。コーランにおいては、アッラーは絶対的、超越的存在であると同時に、多くの神人同形論的表現もみられ、アッラーの神学的性格はあいまいで矛盾を含んだものである。コーランに表れるアッラーに関する記述を、どのように統一的に解釈するかという問題は、後の神学者、哲学者、スーフィー(神秘家)の課題となった。

[竹下政孝]

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百科事典マイペディア 「アッラー」の意味・わかりやすい解説

アッラー

〈アラー〉とも。イスラムでいう〈神〉の呼称。正確には〈アッラーフ〉。イスラム以前のアラビア半島には多くの神々がいたが,イスラムでは万物を創造し,かつ滅ぼすこともできる至高神が唯一の神とされ,その超越性が強調される。《コーラン》はその絶対性と全知全能などの属性を語る。ムハンマドはアッラーの子ではなく,その使徒で,最後の預言者。
→関連項目イスラム文化サラート

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「アッラー」の解説

アッラー
Allāh

イスラームにおける絶対的な唯一神。その語源については,これをアラビア語とする説と,外来語とする説とがある。すでにムハンマド以前,メッカで至上神として崇拝されていたが,ムハンマドにより,唯一神とされるに至った。ムスリムは,コーランに記されたアッラーの属性99を選び出し,これをアッラーの美名として称える。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アッラー」の意味・わかりやすい解説

アッラー
Allāh

イスラムの唯一神。イスラム以前にも一神教の観念や「アッラー」の語はあったが,アラビア人は特にそれほどの崇拝をしなかった。ムハンマドがその語に明確な意味を与え,イスラムの唯一神とした。コーランにおいて,アッラーは唯一の神,世界の創造者,全知全能なるものとして描き出されている。アッラーの意志,定め,裁きは絶対的であるが,他方,彼が大慈大悲の徳をもつこと,超越的であるとともに最も身近な存在であることなどが信徒に説かれた。

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旺文社世界史事典 三訂版 「アッラー」の解説

アッラー
Allāh

イスラームの唯一絶対神
キリスト教世界における英語のゴッド(神)と同じ意味のアラビア語。イスラームの成立以前からアラビア人の信仰の対象であったが,ムハンマドにより,唯一絶対の全知全能の神とされた。イスラームの告白の第一は「アッラーのほかに神なし」である。

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世界大百科事典(旧版)内のアッラーの言及

【イスラム】より


【イスラムとはなにか】
 イスラムはアラブの預言者ムハンマドが610年に創唱した一神教で,世界宗教として西アジア,アフリカ,インド亜大陸,東南アジアを中心に現在ほぼ6億の信者をもつ。正しくはアラビア語でイスラームといい,〈唯一の神アッラーに絶対的に服従すること〉を意味する。信者をムスリムというが,それは〈絶対的に服従する者〉の意である。…

※「アッラー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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