ワニ類では吻(ふん)部がもっとも細長いクロコダイル科ガビアル亜科の1種。別名ガンジスワニ。インド北部,パキスタン西部からアッサム地方のインダス,ガンジス,マハーナディ,ブラマプトラの各河川に分布し,ミャンマーのイラワジ川からも記録がある。大型で全長3.5~4.5m,最大は6.25mに達する。左右の上顎骨が長くのびて互いに接するため,その先にある前顎骨は鼻骨と隔てられる。この特徴で他のワニ類と分けられ1種だけでガビアル科を形成することもあるが,化石種を加えた比較により,現在ではクロコダイル科の1亜科として取り扱われている。吻部は極端に細長く,長さは基部の幅の3.5~6倍にも達する。前顎骨は特徴的な八角形をしていて周りに数本の歯が並び,雄では鼻孔の上に瘤状の隆起がある。歯は上下顎とも鋭く,上あごに56~58本,下あごに50~52本もあってワニ類ではもっとも多い。本種は四肢の水かきが発達し他のワニよりも水中で過ごす時間が多く,水面下すれすれのところで目と鼻先だけ出して静かに浮かび,長い吻部を横なぎにして,近寄る魚の群れを襲う。繁殖期には雌は川の堤の砂中に穴を掘り,40個ほどを産卵する。孵化(ふか)した子ワニは体長35cmほどですでに吻部が長い。ガビアルはヒンドゥー教徒によって聖なる神の使いとされてきたが,皮革用として密猟されまた卵が食用に供されるため,近年は生息数が激減し,政府の手で保護増殖が進められている。
マライガビアルとも呼ばれる東南アジア産ガビアルモドキTomistoma schlegelii(全長5m)は,外形や生態がガビアルに類似し,化石種の比較でもガビアルに近縁と考えられている。
→ワニ
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
爬虫(はちゅう)綱ワニ目クロコダイル科のワニ。別名インドガビアル、ガンジスワニ。インドのインダス、ガンジス、マハナージ、ブラマプトラ各河川流域およびミャンマー(ビルマ)のイラワジ川下流域に分布する。現生種はガビアル属1種だけで、クロコダイル科のなかでもとくに吻部(ふんぶ)が細長い。鼻骨と前上顎骨(がくこつ)が接しない点で独立の科に分類されることもあるが、最近では化石種を含めクロコダイル科のガビアル亜科に入れられる。全長4~6.2メートル、吻部は現生ワニ中もっとも細長く、歯の数も最多で、片側の上あごで29個、下あごで26個ほどある。吻端は八角形で雄の外鼻孔はガーラとよばれるこぶ状隆起になっている。水中にいることが多く、長い吻部を横なぎにして魚の群れを襲う。本種はヒンドゥー教徒によって聖なる神の使いとされ、また水の神として保護されてきたが、皮や卵を求めて乱獲された結果著しく減少し、インドでは1975年から政府により保護増殖が進められている。
[松井孝爾]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…西アフリカ産の原始的なワニとされるコビトワニOsteolaemus tetraspisは,全長2m足らずの小型でおとなしいが,それ以外はすべて大型で性質が荒い。吻(ふん)部が長く,その長さは基部の幅の3~4.5倍もあって歯の数も多いインド・パキスタン産のガビアルGavialis gangeticus(イラスト)は,1属1種の特異なワニで,全長4~6m。ワニ類ではもっとも吻部が長い。…
※「ガビアル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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