ミャンマーの国土を北から南へ縦断してベンガル湾に注ぐ,同国最大の河川。全長2160km。流域面積約43万km2。その語源はヒンディー語で〈象の川〉を意味するイーラーバティーとも,〈大きな川〉を意味するエーラーバティーとも言われる。カチン州の州都ミッチーナーの北40kmの地点でヌマイカ(恩梅開)川とマリカ(邁立開)川が合流してイラワジ川となる。上流の河谷は古来,雲南からのルートとして利用された痕跡があり,川は現在に至るまで重要な交通路となっている。上流には,両岸の距離が50m前後に狭まった峡谷が3ヵ所あり,高さ50~100mの石灰岩の断崖が50~60kmにわたって続く。流れはマンダレー近くでサガインの山並みを半周して西行,パコックーの上流で北から流れてきた最大の支流チンドウィン川と合流する。これより南はかつてはチンドウィン川の下流であり,イラワジ川は今のシッタウン川を流れていたと言われる。この合流点より南では,川は平地を流れ川幅も広がり流れも緩やかになる。流水量は雨季の7月が最高,乾季の2月が最低で,その水位差は10m以上にもなる。下流では,ミャンアウンの南50kmでバテイン川とに分岐,さらにその南でパンタノー,ボーガレー,ピャーポンなど全部で九つの分流に分かれて海に注ぐ。河口付近では,上流から運ばれてきた微泥が長年の間に沈殿堆積して南北290km,東西240km,面積3万km2にのぼる広大な沖積地(イラワジ・デルタ)を形成している。このデルタはイギリス植民地時代に開発されて,世界的な穀倉地帯になっている。
執筆者:大野 徹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ミャンマーではエーヤーワディー(Ayeyarwaddy)川と呼ぶ。現在のミャンマー連邦を縦断し,アンダマン海に注ぐ川。東北部国境付近にあるバモーまで外洋船の航行が可能で,中国へ抜ける交易ルートとして重要。また下流部デルタ地域は,19世紀後半以降広大な稲田として開発された。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
「エイヤーワディ川」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…地勢は北高南低で,西からのびてきた低地ヒマラヤがミャンマーの北端で分岐し,一つはインド,バングラデシュとの間をナガ丘陵,チン丘陵,アラカン山脈の山並みとなって南走し,もう一つは中国,ラオス,タイとの間でシャン台地,テナッセリム山脈を形成,マレー半島へと連なっている。国土の東と西を南北に走るこの二つの山並みに挟まれた中央をイラワジ川が北から南へ貫流し,流域に平野を形づくっている。ヒマラヤ山脈へと連なる北部のカチン山地には,カカルボ・ラージ,ガムラン・ラージといった6000m近い高峰が群立している。…
※「イラワジ川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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