金属,無機,有機,高分子などの物質を溶融状態から急激に冷却すると,結晶化する余裕がなく,各物質は融体と同様な無定形状態のまま凍結され,ガラス状の非晶質固体となる.この融体から非晶質固体になる体積変化は,融体は融点 Tm 以下に冷却されても,結晶化せず,過冷却融体のまま冷却され粘度は増加し,体積は減少するが,ある温度(ガラス転移温度 Tg)でその体積の収縮(膨張係数)が緩やかになり,流動性はほとんどなくなり,ガラス状の硬い状態(粘度約 1013 P(ポアズ)以上)に変化する.このように融体から非晶質固体に変化することをガラス転移とよぶ.このガラス転移は,熱力学的な熱平衡としての相転移ではなく,原子または分子のミクロな運動が急激に緩慢になり,凍結された準安定な非平衡状態であり速度論的変化である.ガラス転移点 Tg の付近では,体積の増加は折れ曲がり,膨張係数,比熱など(化学ポテンシャルの二次導関数)はガラス転移温度で不連続に変化することから,古くは熱力学的二次相転移とよばれたが,現在では熱力学転移ではなく,共同的な分子運動の凍結による速度論的転移として理解されている.一方,融体をゆっくり冷却すると,融点 Tm 以下の温度で結晶化 Tc が起こる.一般に結晶の体積はガラスの体積より小さく(密度は高い),その体積の差を自由体積とよぶ.いいかえると,自由体積はガラス転移温度以下ではほぼ一定であるが,ガラス転移温度以上では急激に増加する.このようなガラス転移現象を等自由体積状態,等配位エントロピー状態,等粘性状態としてとらえて説明されているが,まだ十分に説明はできていない.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…この状態からさらに冷却すると,ある温度の近くで,ふつうの熱活性化過程から考えられるよりも急激に粘性が大きくなって,固体状態になるとともに熱膨張率や比熱などが,ほぼ不連続に変化する。この変化をガラス転移glass transitionと呼び,この温度以下の状態がガラス状態で,非晶質状態の一種である。ガラス転移は純粋な熱力学的な相転移ではなく,ガラス転移温度は急冷速度に多少依存する。…
※「ガラス転移」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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