家庭医学館 「がんの遺伝子診断」の解説
がんのいでんししんだん【がんの遺伝子診断】
このようながん発生に関係する遺伝子(DNA)を、血液、喀痰(かくたん)、尿、便などの中の細胞から抽出(ちゅうしゅつ)、検査してがん診断に役立てる方法を遺伝子診断といい、つぎのような方法があります。
①遺伝性のがんを早期に見つけて、将来発症する可能性を探ります。DNAの一部が欠損しているためにポリープのできやすい家族性大腸ポリポーシス症などの診断が、現在は出生前でも可能で、受精卵(じゅせいらん)の段階で判定できるものもあります。
②がんがからだのどこにできているかを調べます。術後の微小な残存がんや再発がんも確認できます。実際例では、白血病(はっけつびょう)の発症に関係する異常遺伝子の存在がわかっており、この遺伝子を突き止めて早めに診断し、治療することが行なわれています。
③がんの広がりや転移(てんい)のしやすさなど、悪性度を調べたり、放射線や抗がん剤に対する感受性を調べて、がんの性質を判定します。これによって、むだのない的確な治療法が選択できます。
④検出のむずかしいがんを、症状の出る前に見つけます。
症状が出てからでは根治手術がほとんど不可能な膵(すい)がんと胆管(たんかん)がんを、血液中に含まれる腫瘍(しゅよう)DNA(遺伝子本体)から診断する方法が、1998年に初めて発表されました。まだ研究中ですが関心は高く、期待される診断法です。
なお、とくに①の遺伝性のがんの診断については、判定される子どもや家族の精神的な負担、プライバシー、生命保険や就職、結婚で不利を招かないか、などの問題点が指摘されており、今後、論議を尽くした指針づくりが望まれます。