就職とは,職業に就くことであり,新しい職場を得ることであるが,職業に経済的,社会的その他さまざまな側面があるように,就職にも多面的な意味がある。就職は,労働市場における求職と求人の結合の結果であると同時に,就職する個人にとっては,職業選択の結果であり,企業や職場に新人として参入することであり,新しい生活様式へ移行することを意味する。新規学卒者の就職は,学校生活から職業生活への移行を意味するとともに,日本においては,大企業を中心とした終身雇用システム(終身雇用制)の起点という意味をもっている。〈就職とは,職業に就くというよりは,就社である〉といわれるのは,ここから生じている。
求人はさまざまな媒体を通じて,求職者と結びつく。こうした就職経路は,求職者の層により異なり,新規学卒者の場合は学校もしくは公共職業安定所が多く,転職者や再就職者の場合は公共職業安定所のほか,新聞広告や縁故も多い。最近は求人情報誌を通じた就職も増えている。現在,日本には年間90万人ほどの新規学卒就職者がいるが,このうち中学卒は2万人,高校卒38万人,短大・高専卒16万人,大学卒は34万人である(1996年3月卒)。学卒以外の一般求職者で公共職業安定所の紹介による就職は,年間155万件(1996)を数える。就職事情は,求職に対する求人の倍率(求人倍率)や,求職者のうち就職した者の割合(就職率)などにより表される。新規学卒就職者のうち中学卒は,高校進学卒の上昇に伴い,1963年をピークに急速に減少した。かわって増えてきた高校卒は,68年のピーク時には求人倍率が4倍近くあったが,就職者数はその後減少ないし横ばいで推移し,求人倍率も1.8倍(1996年3月卒)に低下しているが,就職率はほぼ100%近い。一般求職者については,石油危機(1973年秋)の影響のほとんど出なかった73年には求人倍率は1.8倍あったのが,その後の低成長への移行で75年以降求職が求人を上まわるようになり,就職率も10%を割り,なかでも中高年齢層求職者の就職率は低く,就職難は深刻となった。
執筆者:水谷 暉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…各人に能力に応じた適当な職業に就く機会を与えることによって就職や転職の円滑化を図ることを目的とする法律。職安法と略する。…
※「就職」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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