ガーリブ(その他表記)Mirzā Asadullāh Khān Ghālib

改訂新版 世界大百科事典 「ガーリブ」の意味・わかりやすい解説

ガーリブ
Mirzā Asadullāh Khān Ghālib
生没年:1797-1869

インドのウルドゥー抒情詩ガザルghazalの巨匠で,ミールMīrと並び称される文学者。トルコ系の武門を先祖とするアーグラ名家に生まれた。彼が詩作を始めたのは11歳の時ともいわれているが,青年期にデリーに定住するようになってからもおもにペルシア語で詩作していた。ガーリブ自身は終生ペルシア詩の詩人,ペルシア語の大家であることを誇りとしていたし,初期の難解なウルドゥー抒情詩は一般に全然受け入れられなかった。1854年ザウクZauqに次いでやっとバハードゥル・シャー2世の詩の師匠になったガーリブは,多年望んだ地位と名誉を得た。このころから彼は多忙のため書簡ウルドゥー語でしたため始めたが,後にこれが近代散文の先駆として評価されるようになった。ガーリブの抒情詩は詩想と表現の新奇さをおもな特徴としている。詩集は彼自身が編纂した《ディーワーネ・ガーリブ》(1821)以来現在まで優に100点以上が出版され,愛読されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガーリブ」の意味・わかりやすい解説

ガーリブ
がーりぶ
Ghālib
(1797―1869)

インドのウルドゥー語詩人。アグラに生まれ、のちデリーに移った。ムガル朝のバハードゥル・シャー2世の詩の師匠にあたる。叙情詩(ガザル)がとくに優れ、ミールと並んでガザルの二大巨匠と称され、『ガーリブ詩集』はいまも広く愛読されている。彼の詩は哲学的、思想的な内容を、独自の斬新(ざんしん)な表現技法と流麗な韻律で表しているところに大きな特徴がある。ウルドゥー詩のほか、平明な書簡文はウルドゥー近代散文の先駆として高く評価されている。ペルシア語による詩作にも優れ、インド亜大陸最後の古典ペルシア語詩人といわれている。

鈴木 斌]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガーリブ」の意味・わかりやすい解説

ガーリブ
Ghālib, Mirzā Asadullāh Khān

[生]1797.12.27. アーグラ
[没]1869.2.15. デリー
インド,ウルドゥー語,ペルシア語の詩人。後期デリー派の代表であり,ウルドゥー抒情詩人として古今最大の巨匠と目されている。ムガル朝のバハードゥル・シャー2世の詩の師匠 (1854) 。ウルドゥー詩人中最も多くの詩集と研究書が出版されている。書簡集『高貴なるウルドゥー』 Urdū-e-Mu`allā (69) は近代散文の先駆となった。

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