日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
キャセイ・パシフィック航空
きゃせいぱしふぃっくこうくう
Cathay Pacific Airways Ltd.
香港(ホンコン)に本社をおく国際航空会社。略称CPA。スワイヤー・グループの中核企業。1946年に香港でスワイヤーJohn Kidston Swire(1893―1983)により創設された。イギリスのリバプールで貿易商を営んでいたスワイヤー家は、1867年に上海(シャンハイ)に進出。第二次世界大戦後は、ロンドンから香港に拠点を移し、商社(スワイヤー父子商会Swire & Sons Ltd.)として広範な業務を展開していたが、キャセイ・パシフィック航空もその一つであった。スワイヤーは、1939年以前から、物資を極東から世界各地へ空の便を使って輸送するという構想を抱いていたが、1946年の同航空会社の設立は、その考えを実現したものであった。スワイヤーは同社を香港と東アジア、オーストラリアの各都市を結ぶローカル路線でトップクラスの航空会社にし、さらに国際的な企業へと育て上げた。1959年には香港航空Hong Kong Airwaysを吸収、1970、1971年と増資を重ね、1996年末にはスワイヤー家の中核商社であるスワイヤー・パシフィックSwire Pacific Ltd.が株式の43.9%を、サイティック・パシフィックCITIC Pacific Ltd.が25%を保有した。傘下の企業としては、75%出資の子会社AHKエア・ホンコンAHK Air Hong Kong Ltd.はヨーロッパ、中東、日本およびアメリカへの定期貨物便を、また18%出資の香港ドラゴン航空Hong Kong Dragon Airlines Ltd.が中国と、日本を含むその周辺で旅客運航している。
キャセイ・パシフィック航空は2000年時点で、香港を中心にアジア全域、オーストラリア、ヨーロッパ、北アメリカ、南アフリカなど世界48か国を結ぶルートをもち、日本には、1959年に香港航空を吸収した際に東京路線を引き継ぎ就航した。
2006年、香港ドラゴン航空の株式を100%取得して完全子会社化するとともに、中国国際航空(AC)と相互に株式保有率を高め提携強化することを決定した。2009年時点で、保有機数は123機、世界36か国、116路線に就航している。従業員数はキャセイ・パシフィック航空単体で1万8590人、グループ全体で2万6726人(2009年9月)。2008年の売上高は865億6300万香港ドル。アメリカン航空、カンタス航空などとともに航空連合のワンワールドを1998年に設立している。
[上川孝夫]