ギボンズ(読み)ぎぼんず(英語表記)Orlando Gibbons

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギボンズ」の意味・わかりやすい解説

ギボンズ(Orlando Gibbons)
ぎぼんず
Orlando Gibbons
(1583―1625)

イギリスの作曲家。イギリス・ポリフォニー様式の最後の作曲家で、当時のもっとも優れた鍵盤(けんばん)楽器奏者でもあった。鍵盤楽器のための曲と教会音楽、とくにイギリス国教会の礼拝用合唱曲であるアンセムの作曲家として重要。ほかにマドリガル室内楽曲も遺(のこ)す。オックスフォードに生まれたのち、一家で移住したケンブリッジのキングズ・カレッジの聖歌隊員(1596~98)、王室礼拝堂のオルガン奏者(1604)、国王付きバージナル奏者(1619)を経てウェストミンスター寺院のオルガン奏者(1623)。1625年同寺院でのジェームズ1世の葬儀の音楽を指揮したのち、王室礼拝堂のメンバーとともにカンタベリーにおいて新国王チャールズ1世の到着を待つ間に同地で死去。父ウィリアム(1595没)および2人の兄エドワード(1650ころ没)、エリス(1603?没)、息子クリストファー(1615―76)も音楽家。

[南谷美保]


ギボンズ(James Gibbons)
ぎぼんず
James Gibbons
(1834―1921)

アメリカカトリック聖職者。アイルランド系移民の子としてボルティモアに生まれる。セント・メリー神学校に学び、1861年司教となり、南北戦争に従軍牧師として活躍。67年ノース・カロライナ州最初の代牧、77年ボルティモア大司教となり、86年に教皇レオ13世によって枢機卿(すうききょう)に任ぜられた。ワシントン・カトリック大学の創立尽力して、87年初代総長となり、教育に貢献した。アメリカの社会問題に深い関心をもち、「労働騎士団」Knights of Laborを支援し、第一次世界大戦に際しては1917年「全国カトリック戦時委員会」National Catholic War Councilを組織して奉仕活動を展開した。積極的な働きと著書を通して、プロテスタント社会にカトリックをより広く理解せしめた功績は大きい。

[曽根暁彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ギボンズ」の意味・わかりやすい解説

ギボンズ
Gibbons, Orlando

[生]1583.12.25. オックスフォード
[没]1625.6.5. カンタベリー
イギリスの作曲家,オルガニスト。 1596年ケンブリッジ・キングスカレッジの聖歌隊に加わり,1605年以降王室礼拝堂のオルガニスト,23年からウェストミンスター寺院のオルガニストとなる。すぐれた鍵盤楽器奏者であると同時に,教会音楽,室内楽曲,鍵盤楽曲,マドリガルなどに多くの作品を生み,17世紀イギリスの最も重要な作曲家の一人。作品『ビオルのための3声のファンタジー』 (1610頃) ,『5声部のマドリガルとモテト』 (12) などがある。

ギボンズ
Gibbons, James

[生]1834.7.23. アメリカ,メリーランド,ボルティモア
[没]1921.3.24. アメリカ,メリーランド,ボルティモア
アメリカのカトリック聖職者。ボルティモアの大司教 (1877) を経て枢機卿 (86) となり,次いでアメリカ・カトリック大学の設立に尽力,その初代総長となった。労働者に理解をもち,その運動を擁護。またアメリカの反カトリック世論を啓蒙するため著作活動を行なった。主著"The Faith of Our Fathers" (76) 。

ギボンズ
Gibbons, Grinling

[生]1648.4.4. ロッテルダム
[没]1721.8.3. ロンドン
イギリスの彫刻家。『ジェームズ2世像』などの銅像もあるが,おもに木彫建築装飾によって知られる。ハンプトン宮殿の装飾,セント・ポール大聖堂の内部装飾で有名。花鳥,木の葉などをきわめて写実的に彫刻。 1693年ウィリアム3世によって王室彫刻家に指名された。

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