教会で用いられるように作られ,演奏される音楽。古来さまざまな宗教宗派に付随して教会音楽が存在するが,普通はキリスト教の音楽を指す。
キリスト教の教会音楽の核心をなすものは,カトリック教会のミサと聖務日課,プロテスタント諸教派の礼拝に用いられる典礼用の音楽である。その中には,ユダヤ教の会堂の音楽の流れを汲むグレゴリオ聖歌の詩篇唱や,ルターの時代に由来するドイツ福音主義教会のコラールのように,きわめて長い伝統に根ざすものが含まれる。と同時に,歴史的な歩みの中で,つねに新しい語法と音楽様式による新たな教会音楽が生み出されてきた。J.S.バッハの教会カンタータはバロックの劇音楽様式による教会音楽の記念碑であり,ベートーベンの《荘厳ミサ曲》は古典派様式そのものの頂点に立つシンフォニックな作品である。また現代のペンデレツキの《ルカ受難曲》には,トーン・クラスター,微分音など最新の音楽的語法が効果的に用いられている。そのようにして教会音楽は,歴史的に蓄積された膨大なレパートリーを通じて,西洋音楽の流れの断面を示しつつ,同時に西洋の音楽文化の全体像に対するキリスト教の感化の偉大さを物語っている。
礼拝の儀式の前奏・後奏に用いられる自由形式のオルガン曲や信者の私的集会のための音楽は,厳密な意味での典礼音楽ではないが,広義の教会音楽の範疇に属する。他方,シューベルトの《アベ・マリア》や,ヘンデル以降の大多数のオラトリオのように,当初から教会を離れたコンサート形式を意図して作曲された作品は,たとえ宗教的気分が濃厚であっても,本来の意味での教会音楽とは呼ばない。歴史的に眺めるならば,18世紀半ば以降,演奏会場に場所を移した宗教音楽が隆盛に向かうにつれて,本来の意味での教会音楽は,しだいにその範囲を狭めつつあるといえよう。
→キリスト教音楽
執筆者:服部 幸三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
狭義にはキリスト教教会の礼拝に用いられる音楽を意味する。この種の音楽は礼拝様式と深くかかわっているため、歴史的にも教派によってもさまざまな種類がある。また広義に解しては、キリスト教と関係のある音楽の総称として用いられるが、多くの場合、音楽そのものに、より比重が置かれている。
[磯部二郎]
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