改訂新版 世界大百科事典 「労働騎士団」の意味・わかりやすい解説
労働騎士団 (ろうどうきしだん)
Knights of Labor
19世紀後期におけるアメリカの有力な労働組合。1869年,ペンシルベニア州フィラデルフィアの仕立工のグループにより神秘的儀式をもつ秘密の労働団体として発足し,ユリア・スティーブンズ団長の下にしだいに全国的に拡大した。79年テレンス・パウダリーが団長となり,81年秘密性を解除したころからめざましい発展をとげ,86年の絶頂期には70万以上のメンバーを擁した。職種,人種,民族系統などの相違を超えたあらゆる労働者階級の団結を強調し,生産・消費協同組合の樹立による労働者の解放を究極目標に掲げ,多くの半・不熟練工,黒人労働者をも組織に加え,指導部のスト抑制策にもかかわらず,活発なストライキやボイコットを展開した。しかし雇主側の反撃,職能別組合との対立,指導の拙劣さなどにより86年以降急速に衰退し,アメリカ労働運動の指導権をAFLに譲り渡し,90年代末までに事実上存在をやめた。
執筆者:野村 達朗
フランスの労働騎士団Chevalerie de Travail française
アメリカ,ベルギーの同名の組織に刺激されて,1893年フランスで結成された組織。フリーメーソンを模して秘密結社の形態をとり,社会主義社会の実現を目ざした。その実態は社会主義諸政党,労働組合などの活動家のクラブ組織にほかならなかったが,P.ラファルグ,A.ブリアンら各派の指導的社会主義者,F.ペルーティエら労働組合運動指導者を中心に全国に約10万と見積もられる会員を擁し,90年代,この組織は労働運動の表面上の対立とは別個に人的交流の場を提供した。また労働組合運動におけるサンディカリスムの思想的伝播および社会主義運動における統一の準備に寄与した。1911年に解散。
執筆者:相良 匡俊
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報