ギリシア文字(読み)ぎりしあもじ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギリシア文字」の意味・わかりやすい解説

ギリシア文字
ぎりしあもじ

ギリシア文字は、おそらく紀元前9世紀のころ、ギリシア人がセム系のフェニキア文字を借用し、これに独自の改変を加えてできあがった。個々文字の名称と配列はフェニキア文字のそれとほぼ同じであるが、セム文字にはなかった母音文字を備え、1字1音による厳密に音素的な表音原理を確立した点で、この文字体系は文字史上に画期的な意味をもっている。

 古い時期のギリシア文字は、地域によっていろいろな変種があったが、大別すると、小アジアのイオニアを中心に発達した「東ギリシア型」と、主としてギリシア本土で行われた「西ギリシア型」の二つに分かれる。前4世紀以降ギリシアの標準アルファベットとして普及したのは前者の型で、これは24字からなる。古くは大文字だけで、小文字中世草書体から発達した。

 一方、イタリアに移入されてラテン文字の基になったのは西ギリシア型のアルファベットで、その違いが現在のギリシア文字とラテン文字の違いに反映している。このラテン文字は近代の西欧諸言語に継承されて、世界でもっとも有力な文字体系となったが、ギリシア文字から直接派生した文字体系としては、古くはゴート文字アルメニア文字、そして9世紀ごろスラブ語の表記のためにつくられたキリル文字などがある。

[松本克己]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ギリシア文字」の意味・わかりやすい解説

ギリシア文字
ギリシアもじ
Greek alphabet

古代ギリシア人がフェニキア文字を借用してつくった文字。前 1000年頃にできあがったものとみられており,初めは東ギリシア文字 (イオニア文字) と西ギリシア文字 (カルキディア文字) とで多少の差があったが,前4世紀にイオニア文字に統一された。イオニアのアルファベットは,24の文字から成る。ギリシア文字のフェニキア文字と異なる大きな特徴は,母音を表わす文字があることである。なお,現在は,現代ギリシア語を書くのに用いられている。

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