古代エジプトの象形文字の解読に重要な手がかりとなった玄武岩製石碑。ナポレオンのエジプト遠征のおり,1799年8月,ナイルの一河口の町ロゼッタ(アラビア語ではラシード)の近くで発見されたのでこの名がある。現在大英博物館所蔵。上段,中段,下段にヒエログリフ(聖刻文字),デモティック(民衆文字。ヒエログリフの略書体),ギリシア文字で同一の内容の文(プトレマイオス5世をたたえる神官団の布告)が刻まれている。ギリシア語文は,発見後ただちに解読された。二つのエジプト語文に関しては,ヒエログリフの部分が破損が著しかったのと,デモティックの名が親しみを感じさせたので,学者たちはまずデモティックの解読に挑戦したが成功せず,結局ヒエログリフ部分のカルトゥーシュ(王名枠)内のプトレマイオスという表記の分析と他の碑銘との比較研究によって,フランスのシャンポリオンが最初の解読者となった。
執筆者:加藤 一朗
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… エジプト学の成立は,ナポレオンのエジプト遠征(1798‐99)を契機とする。遠征に同行した学者たちの調査記録《エジプト誌》全21巻(1809‐28)によって研究の基礎資料が集められ,遠征の際発見されたロゼッタ・ストーンを手がかりに,シャンポリオンによるヒエログリフ解読がなされた(1822)。通常この年をエジプト学成立の年とする。…
… ヒエログリフはいわゆる文字の通念からはずれたものとして,その一つ一つが神秘的・象徴的な意味をもつものと考える風潮が一般的となった。そして,近・現代学者によってヒエログリフが再び文字として認識され,新たに解読されるにいたる契機となったのは,ナポレオンの部下将兵によって発掘されたロゼッタ・ストーンであった。この碑文は上・中・下段にそれぞれヒエログリフ,デモティック,ギリシア文字が刻まれており,ギリシア語部分がまず解読され,他の2文も同一の内容をもつという(正しい)想定のもとに,ヨーロッパの言語学者・東洋学者たちが解読を試みた。…
…早くも1811年には《ファラオ統治下のエジプト序説》を著している。 こうして,やや回り道もしたし多くの試行錯誤も経験したが,ロゼッタ・ストーンやフィラエ島出土の碑文などをよりどころとして,古代エジプト文字の解読に成功し,その成果を1822年パリ学士院で発表した。この年が近代エジプト学の出発点とみなされているが,彼の真の偉大さは,この後の短い晩年(約10年間)に,エジプト学の全分野にわたって確固たる基礎を築くために生命を燃焼しつくし,かつ十分に成果を挙げたことにある。…
※「ロゼッタストーン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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