ミュケナイ文書(読み)ミュケナイもんじょ

百科事典マイペディア 「ミュケナイ文書」の意味・わかりやすい解説

ミュケナイ文書【ミュケナイもんじょ】

線文字Bによる文書総称。使用されている言語はインド・ヨーロッパ語族に属する。1952年ベントリスによって解読され,それまでの予想に反してギリシア語であることが確認された。線文字Bは粘土板に書かれ,クレタ島のクノッソス,本土のピュロス,ミュケナイ等から出土音節文字であるため表記は不完全の点が多く,未解読の文書も残る。前1450年から前1200年に属し,歴史時代のアルカディア方言に近く,ホメロスより古形を伝える面がある。文書の内容は財産目録の類のみで文学はなく,語彙(ごい)は少ない。→クレタ文字ミュケナイ文明

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

改訂新版 世界大百科事典 「ミュケナイ文書」の意味・わかりやすい解説

ミュケナイ文書 (ミュケナイもんじょ)

エバンズのクノッソス発掘,ブレーゲンC.W.Blegenのピュロス発掘,ウェースA.J.B.Waceのミュケナイ〈油商人の家〉発掘などで得られた粘土板や,ティリュンス,テーバイ,オルコメノス,ミュケナイ出土の壺などに書かれた短い碑文など,線文字Bによる文書の総称。1952年のベントリスとチャドウィックによる解読の成功により,今までホメロスが唯一の文献史料であったミュケナイ時代の研究に新たな材料を提供し,研究進展の契機をなした。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のミュケナイ文書の言及

【インド・ヨーロッパ語族】より

…現在のヨーロッパではイベリア半島のバスク語,これとの関係が問題にされているカフカス(コーカサス)の諸言語,それにフィンランド,ハンガリーなどフィン・ウゴル系の言語がこの語族から除外されるにすぎない。この広大な分布に加えて,その歴史をみると,前18世紀ごろから興隆した小アジアのヒッタイト帝国の残した楔形(くさびがた)文字による粘土板文書,驚くほど正確な伝承を誇るインド語派の《リグ・ベーダ》,そして戦後解読された前1400‐前1200年ごろのものと推定される線文字で綴られたギリシア語派(〈ギリシア語〉参照)のミュケナイ文書など,前1000年をはるかに上回る資料から始まって,現在の英独仏露語などに至る,およそ3500年ほどの長い伝統をこの語族はもっている。これほど地理的・歴史的に豊かな,しかも変化に富む資料をもつ語族はない。…

※「ミュケナイ文書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

部分連合

与野党が協議して、政策ごとに野党が特定の法案成立などで協力すること。パーシャル連合。[補説]閣僚は出さないが与党としてふるまう閣外協力より、与党への協力度は低い。...

部分連合の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android