日本大百科全書(ニッポニカ) 「クチバシカジカ」の意味・わかりやすい解説
クチバシカジカ
くちばしかじか / 嘴鰍
嘴杜父魚
grunt sculpin
[学] Rhamphocottus richardsonii
硬骨魚綱スズキ目クチバシカジカ科に属する海水魚。相模湾(さがみわん)、東京湾、茨城県、宮城県松島湾、岩手県角浜(かどのはま)、千島列島、ベーリング海を経てアメリカのカリフォルニア州に至る北部太平洋域に分布。体は短くて高く、側扁(そくへん)する。頭が大きく、体長のおよそ2分の1を占める。頭頂部は凹み、その両側によく発達した骨の隆起がある。吻(ふん)は長くてとがり、和名の由来となっている。口は小さく、唇は厚い。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の棘(とげ)は強大で、その上部と後部にも強い棘がある。体と頭は、硬い多尖頭(たせんとう)の小棘(しょうきょく)をもった小さい変形鱗(へんけいりん)で覆われる。体は黄褐色で、暗褐色の斑点(はんてん)が並ぶ。頭には唇や目に達する黒い帯状斑がある。胸びれ、尾びれおよび臀(しり)びれは橙色。全長10センチメートルほどになる。沿岸の岩礁域の潮だまり(タイドプール)や砂浜にすみ、小形の甲殻類を食べる。頭をゆっくりと左右に振りながら、両眼を交互に動かし、長い胸びれを使って海藻や岩の上をはう。この行動と体色から道化師をイメージするという。近年、日本近海からも漁獲されるようになった。たも網で捕れ、すくいあげたときに擦れたような音を出す。
[尼岡邦夫]