くまのみ(読み)くまのみ(英語表記)anemonefish

精選版 日本国語大辞典 「くまのみ」の意味・読み・例文・類語

くまのみ

  1. 〘 名詞 〙 スズメダイ科の海産魚。全長一五センチメートルに達する。体は著しく側扁した楕円形で、体色は暗赤褐色の地に青白色の幅広い三横帯がある。本州中部以南の磯(いそ)にすむ。サンゴイソギンチャクやイボハタゴイソギンチャクなどの大形のイソギンチャク類と共生し、危険を感じた時や夜間は、その触手の間にかくれる。イソギンチャクの毒にやられないのは皮膚から分泌される粘液によるといわれている。雌が死ぬと、雄が性転換し、雌になる。また、イソギンチャクの基部付近の岩の表面に卵を産みつけ、雄が保護する。観賞魚として人気がある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「くまのみ」の意味・わかりやすい解説

クマノミ
くまのみ / 熊之実
anemonefish
[学] Amphiprion clarkii

硬骨魚綱スズキ目スズメダイ科の海水魚およびクマノミ属の総称。英名はアネモネフィッシュ。千葉県以南の太平洋、インド洋に広く分布。体は卵形で、ほかのスズメダイ科の魚類とは、鱗(うろこ)が細かく1縦列に50枚以上あること、歯が円錐(えんすい)状で1列に並ぶことなどで区別される。大形のクマノミイソギンチャクと共生し、1尾の大きな優位な雌、2~3尾の中形の雄、数尾の幼魚からなる雌中心の集団をつくる。雌がいなくなると、雄のうち最優位の個体が性転換をしてボスとなる。夏に2週間に一度くらいの頻度でイソギンチャクの近くの岩を掃除し、200~300個の楕円(だえん)形の卵を産み付ける。親はつねにひれで新鮮な水を送り、また死卵を取り除く。卵は数日後の夜に孵化(ふか)し、仔魚(しぎょ)は数日以上の浮遊期を通じ分散し、その後クマノミイソギンチャクに定位する。クマノミイソギンチャクと長期間接しなかった個体は、クマノミイソギンチャクに捕食されてしまう。

 日本には南西諸島に本種を含め6種のクマノミ類がいるが、いずれも大形イソギンチャクと共生し、特異な泳ぎ方と斑紋(はんもん)で互いに区別される。クマノミ属のうち和名クマノミが分布が広く、もっとも北方にまで生息する。普通カクレクマノミがハタゴイソギンチャクを、ハマクマノミがタマイタダキイソギンチャクを、トウアカクマノミが砂底のイソギンチャクを、ハナビラクマノミがシライトイソギンチャクを、というように共生する相手は種によって異なる。飼育が比較的容易なので観賞魚として親しまれている。食用とはしない。

[井田 齋]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「くまのみ」の意味・わかりやすい解説

クマノミ
Amphiprion clarkii

スズキ目スズメダイ科クマノミ亜科の海産魚。クマノミ亜科は英名anemonefishと呼ばれるようにイソギンチャクsea anemoneとの共生が有名。もともと暖海系でサンゴ礁の魚。日本近海に6種知られるが,トウアカクマノミ,セジロクマノミは沖縄本島以南,ハマクマノミ,ハナビラクマノミ,カクレクマノミは奄美大島に分布し,クマノミだけが黒潮にのって駿河湾から相模湾あたりの磯まで姿を見せる。全長15cmほどになる。青白色の横帯が3本あり,尾びれ後縁が凹形なので他種との区別は容易。成長に伴って体色斑紋が変化し,以前は幼魚はモンツキクワノミ,若魚はクマノミモドキという別種にされていた。産卵期は初夏。イソギンチャクの触手の間に体をうずめ,ひょいひょいと独特のリズムで泳ぐようすは愛らしく,水族館の人気者の一つ。

 クマノミ類がイソギンチャクの毒のある刺胞の攻撃を受けないのは生まれつき免疫があるわけではなく,接触を繰り返して触手に順応することが実験の結果明らかになっている。体表の粘液が毒針を抑制する重要な働きをしていることはわかったが,有効成分が何であるかはまだ明らかになっていない。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「くまのみ」の意味・わかりやすい解説

クマノミ

スズメダイ科の魚。体色は暗褐色で下面はだいだい色。体側に青白色の横帯が3本。全長15cm。本州中部以南〜インド洋に分布し,沿岸の岩礁の間に多い。以前は幼魚はモンツキクマノミ,若魚はクマノミモドキと,別種にされていた。近縁種のカクレクマノミは全長8.5cm,黄赤〜赤色地に3本の白色横帯をもつ。ほかにハマクマノミ,セジロクマノミなどがある。クマノミ類はイソギンチャクと共生するので有名。いずれも食用にはされない。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「くまのみ」の意味・わかりやすい解説

クマノミ
Amphiprion clarkii

スズキ目スズメダイ科の海水魚。海岸の岩礁にすみ,イソギンチャクと共生するので有名。海水産観賞魚として飼育もされる。全長約 15cm。体色は暗褐色で,体側に2本,尾柄に1本の幅広い白色横帯がある。尾鰭の後縁は半月形にくびれる。千葉県以南,アフリカ,ポリネシアに分布する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のくまのみの言及

【熱帯魚】より

…なわばり争いが激しいので,1匹だけで飼うか,または群れで飼うようにする。(d)クマノミAmphiprion clarkii 千葉以南,オーストラリア,アフリカ東海岸に分布。全長15cm。…

【イソギンチャク(磯巾着)】より

…このような状態は,イソギンチャクにとっては餌をとる機会が多くなり,カニやヤドカリにとっては,外敵から身を守ってくれる保護者になる。 ハタゴイソギンチャクやサンゴイソギンチャクがクマノミ亜科などに属する魚と共生する例は有名である。クマノミ類の二十数種類とスズメダイ科の数種類がイソギンチャクの触手の間に潜りこんでも,これらのイソギンチャクに食べられることはない。…

【熱帯魚】より


[海水魚]
 姿,色彩ともに淡水魚より優美なものが多い。日本で入手の容易な種類は,沖縄からフィリピンにかけて分布するもので,スズメダイ類では,コバルトスズメ,ミスジリュウキュウスズメ,ミツボシクロスズメ,クマノミ,ハマクマノミ,カクレクマノミなど,チョウチョウウオ類では,チョウチョウウオをはじめ,トゲチョウチョウウオ,イッテンチョウチョウウオ,フウライチョウチョウウオ,フエヤッコダイなど,ベラ類ではカンムリベラ,ツユベラなど,その他,ハナミノカサゴ,モンガラカワハギ,ツノダシなどがある。 以上のうちスズメダイ類は小型で飼いやすい。…

※「くまのみ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android