改訂新版 世界大百科事典 「クメール文字」の意味・わかりやすい解説
クメール文字 (クメールもじ)
クメール語を表記する文字で南インドの文字に由来するとされる。現在は,普通字体と,アクソー・ムールaksar mul(丸い文字)と呼ばれ,標題,看板,経典,パーリ語の表記などに用いられる,やや装飾的な意味をもつ字体の2種がある(タイでコームKhɔm文字と呼ばれるのは後者である)。筆記体と印刷体の区別はない。子音字母は33あり,若干の例外を除き,それぞれが二重子音の後の要素を表すときに用いる字体と,それ以外の場合に用いる字体の2種を有する。母音記号は21あり,子音字母の上下左右に付けられるが,その子音字母の種類(ほぼ,かつての無声子音と有声子音の区別)によって,表す母音が異なるうえ,音節末音によって別の母音も表すことがあり,きわめて複雑である。これらのほかに,母音で始まる音節を表すのに用いる独立体母音字が12,その他の記号が5ある。数字も固有のもの(タイ語と同じ)を有するが,アラビア数字も使用されている。
執筆者:坂本 恭章
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報