改訂新版 世界大百科事典 「クラクトン文化」の意味・わかりやすい解説
クラクトン文化 (クラクトンぶんか)
イギリス,エセックス州のクラクトン・オン・シーClacton-on-Sea遺跡を標準遺跡とする前期旧石器時代文化。打面が広く,バルブの発達した,打撃角の大きい剝片が特色を示している。それは非常に激しい力が与えられたことを示唆し,おそらく割られる石塊を地上に置かれた石(台石)に打ちつけた剝片剝離法(クラクトン技法)がなされたと考えられる。イギリス,スワンズカムSwanscombe遺跡では,この文化層に40万年前以前の年代が与えられる。ソンム川段丘では絶滅哺乳動物を伴い,アブビル文化に並行すると考えられている。かつて剝片石器文化と石核石器文化が西ヨーロッパに並行したと考えられたとき,この文化は剝片石器文化の最古に位置づけられた。今日でもクラクトン文化は否定しきれないが,クラクトン技法はアシュール文化の全期間に認められ,またクラクトン文化はルバロア技法を含むこともある。
執筆者:山中 一郎
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