旧石器時代の石器名称の一つである。訳名に握斧(にぎりおの)または握槌(にぎりづち)を当てる。用途は未分化であり,おそらく万能な道具として,切る,削る,掘るなどに用いられたものとみられるが,限定できないことから,両面調整石器biface,またフランス語のクー・ド・ポアンcoup-de-poingという名称も用いられる。ヨーロッパ,アフリカを中心とした前期旧石器時代の石器に限って用いられ,ミンデル氷期からリス氷期(50万~23万年前)のシェル文化,アシュール文化の代表的な石器であるが,石製ハンマーで粗く打ち欠いたシェル文化のものに比べて,アシュール文化のハンド・アックスには石材よりもむしろ軟らかい鹿角,木といったハンマーによる加工で,調整のいきとどいた芸術作品ともいえる優品がある。基本的には一端でとがる形をとり,セイヨウナシ形,卵形,楕円形,三角形,尖頭状の細長い形のものなどがある。アフリカではその前身になる礫器類(礫の一端を加工して刃部をつくりだした石器,刃を片刃につくったチョッパー,両刃のチョッピングトゥールの区別がある)から,ハンド・アックスに発達していく過程が層位学的につきとめられていて,はじめは基部に礫の自然面を残したものから,やがて加工は全面におよぶ。この一つの流れ(伝統)はアフリカ,ヨーロッパから西アジア,インドにまでひろがる。これに対して,中央アジア,東アジアには古くからの礫器の伝統がひきつづいているとみられている。近年,韓国の全谷里遺跡でアフリカの例に近い石器が発見され問題になった。東南アジアにみられる両面加工の石器はやや新しい時代のものであり,日本では群馬県不二山遺跡の例があるが,出土層位が明らかでない。後期旧石器時代に層する岩宿遺跡の石器は形状が似ているというにすぎないもので,ハンド・アックス様石器と呼ばれ区別されている。
執筆者:松沢 亜生
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握斧(にぎりおの)状石器。クー・ド・ポワンcoup de poing(フランス語)ともいう。両面を打製で調整し、敲(たた)いたり、割ったり、「万能石器」として用いられた。
[編集部]
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…約200万年前以降,約150万年前までの石器はオルドワン(オルドバイ)式石器と総称され,丸い自然石の一端を何度か打ち欠いたもの(礫(れき)石器)など,比較的原始的なものを含んでいる。ざっと150万年前ごろから後になると,新オルドワン式石器(進歩的オルドワン式石器)と呼べる,より洗練された石器文化が現れ,原始的なハンド・アックス(握斧)を含むのが特徴的である。ただしこのころになると,新オルドワン式石器とともに,あるいはそれとは独立に,典型的なハンド・アックスを豊富に含む,さらに進歩したアシュリアン(アシュール)式石器が見つかる遺跡もあって,石器文化が多様化ないしは変化しつつあったことがわかる。…
…袖の使用例を含め着装法の各種は図解にゆずる。旧石器時代の両面加工石器で握槌(にぎりづち)(ハンド・アックス)と呼ばれるものは,柄をつけずに手で直接握って使ったという想定の命名であろうか。その一部が柄につけて使われたことは,刃に残る使用痕跡の研究から判明している(ロシアのコスチョンキ)。…
…石器製作の際に用いられた石のハンマーも出土している。100万年前以後,新たに主人公として出現した原人は,チョッピングトゥールを改良した新しい器種としてのハンド・アックスを創作した。これはチョッピングトゥールの先端を引き伸ばした形態をもち,両側辺を両側から打ちはがした石器である。…
…しかし,この系統的な発達に先立つ石斧の存在も知られるようになっている。旧石器時代のハンド・アックス(握斧)と呼ばれる石器の中にも,柄を着けたものがあるらしいのである。日本の先土器時代の関東地方にも,3万年前とされる局部磨製石斧があり,世界的にも古い実例に属する。…
※「ハンドアックス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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