日本大百科全書(ニッポニカ) 「クリップス」の意味・わかりやすい解説
クリップス(Sir Richard Stafford Cripps)
くりっぷす
Sir Richard Stafford Cripps
(1889―1952)
イギリスの政治家。ロンドンに生まれ、ロンドン大学を卒業後、弁護士となる。1931年労働党下院議員となり、党内左派の指導者として社会主義連盟を率いて、共産党などと提携しての反ファシズム人民戦線の結成を目ざした。しかし党主流にはいれられず、1939年党から除名された。第二次世界大戦中は、左派としての経歴を買われ駐ソ大使を務めた。またクリップス使節団の団長としてインドに赴き、戦後に自治を与える方針を示すことによってインド民族運動に戦争協力をさせようとしたが失敗した。戦後は労働党アトリー内閣の商務相、経済担当相、蔵相を歴任し、蔵相時代は耐乏生活を国民に説いて経済危機を乗り切ろうとした。
[木畑洋一]
クリップス(Josef Krips)
くりっぷす
Josef Krips
(1902―1974)
オーストリアの指揮者。ウィーン生まれ。同地の国立音楽アカデミーを出て、ドイツとオーストリア各地の歌劇場指揮者を務め、1933~38年ウィーン国立歌劇場指揮者。ナチスに追われてウィーンを離れたが、45年復帰、同歌劇場の再建に尽力した。50年以後、ロンドン交響楽団、バッファロー交響楽団、サンフランシスコ交響楽団の常任指揮者を務めるかたわら、コベント・ガーデン王立歌劇場、メトロポリタン歌劇場、ベルリン・ドイツ・オペラなどに客演した。68年(昭和43)サンフランシスコ交響楽団と初来日。優美な演奏にみるべきものがあったが、晩年のアメリカでの活動は長所を生かしきれなかったうらみがある。
[岩井宏之]