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イギリスの政治家。オックスフォード大学を卒業し、弁護士となる。ロンドンの貧民街の状況をみて社会主義に目覚め、フェビアン協会に加入した。ロンドン大学で教鞭(きょうべん)をとったのち、第一次世界大戦に従軍し、戦後1922年に労働党下院議員となった。1931年の労働党の危機に際して副党首に選ばれ、1935年党首に就任した。第二次世界大戦中はチャーチル連立内閣の副首相として、自治領との関係調整などに活躍した。1945年7月の選挙で労働党が勝利した結果、首相の座につき、1951年まで国政を担当した。彼の政府は、国内的には、産業の国有化を行うとともに、国民医療制度の創設など種々の改革を通じて福祉国家の形を整え、対外的には、インドへの独立付与をはじめ、植民地の縮小を行った。冷戦のなかではアメリカ側を強力に支持したが、朝鮮戦争でアメリカが原爆使用の姿勢を示したときには激しく反対した。
[木畑洋一]
『和田博雄・山口房雄訳『アトリー自伝』(1955・新潮社)』
イギリスの政治家,首相(在職1945-51)。オックスフォード大学卒業後,労働者クラブの理事としてロンドンのイースト・エンド貧民街に住む。第1次大戦ではガリポリで戦い負傷,少佐となる。1922年労働党から立候補して下院に選出される。第2次マクドナルド内閣で郵政相をつとめ,31年総選挙で元閣僚の大半が落選したとき副党首となり,やがて党首となる。第2次大戦中チャーチルの下で戦争内閣に加わり,42年から副首相として活躍。45年の総選挙で労働党に大勝をもたらし,組閣。国有化政策を推進する一方,独自の原爆製造を決定し,冷戦に対処した。49年ポンド危機には公共支出削減を19世紀的経済学と呼んで退け,ポンド切下げを断行。1947年インドからの〈名誉ある〉撤退を指揮し,朝鮮戦争の拡大回避のためアメリカを牽制した。偶然首相になったともいわれるが,冷静な判断でレーニンと比較される傑物であった。
執筆者:都築 忠七
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1883~1967
イギリスの政治家,首相(在任1945~51)。第一次世界大戦に従軍,1922年下院議員に当選,35年労働党党首となった。40年チャーチル戦時内閣に副首相として入閣したが,ドイツの降伏をみて辞任。45年選挙で労働党が大勝すると,首相として党の公約である基幹産業の国有化,社会福祉国家の実現などの政策を次々と実行,またインドなど旧植民地の独立を承認した。51年選挙で労働党が敗れ,首相を辞任,55年党首を辞し,伯爵に叙された。
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…ところが戦争によって対外投資収入と海運収入の二大貿易外収入がともに激減したので,国際収支の均衡を維持し,国民の生活水準を回復するためには,1938年の水準を78%も上回る大幅な輸出の増大をはかる必要があった。したがって戦後,政権を担当したアトリー労働党政府(1945‐51)は戦時の遺産である統制経済の下で輸入の制限と輸出の拡大につとめねばならなかった。1949年に断行された大幅なポンド切下げ(対米4.03ドルから2.80ドルに)の効果と翌年勃発した朝鮮戦争の影響をうけて,輸出は伸び生産は活況を呈したので,統制経済はしだいに緩和され,イギリス経済は平時の状態に帰ったのである。…
…しかし大量失業に直面して蔵相P.スノードンは古典的財政政策を固守し,32年の国際金融危機では自由貿易と金本位制維持のためアメリカ,フランスの金融市場からの借入れに頼り,その条件として失業手当削減を含む緊縮財政実施を受け入れたため,労働党政府は分裂崩壊し,31年の挙国内閣(挙国一致内閣)に参加したマクドナルド,スノードンらは党から除名された。 党再建は運輸一般労組のE.ベビンら労働組合会議(TUC)評議会主導の下に行われ,産業国有化,計画経済など社会主義への移行のための政策綱領をまとめ,自由主義経済の呪縛を断ち切る一方で,絶対的平和主義者の党首ランズベリーGeorge Lansbury(1859‐1940)を辞任させ,新党首C.R.アトリーの下にファシズムの脅威に対し集団安全保障政策をとり,挙国政府の宥和政策に対抗した。第2次大戦では政治休戦に応じ,チャーチルの戦時連立内閣に参加した。…
※「アトリー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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