日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロウミヘビ」の意味・わかりやすい解説
クロウミヘビ
くろうみへび / 黒海蛇
black ridge-fin eel
[学] Callechelys kuro
硬骨魚綱ウナギ目ウミヘビ科に属する海水魚。静岡県、三重県、土佐湾、愛媛県、台湾南部の海域に分布する。体はほとんど円筒形で細長く、後方に向かって細くなり、尾端でとがる。体は全体にわたっていくぶん側扁(そくへん)する。頭部は小さく、全長のおよそ7%。肛門(こうもん)は体のほぼ中央部に位置する。鰓孔(さいこう)は腹側面に開く。吻(ふん)はとがるが、吻端で丸い。口は吻の下面に開き、下顎(かがく)は上顎に含まれる。下顎の先端は前鼻孔(ぜんびこう)の基底の後端に達する。目は吻長のおよそ2分の1で、上顎の後半部の上方に位置する。上唇の縁辺は、口中に開く後鼻孔のそばで切れ込む。舌は固着し、鰓蓋(さいがい)部は膨らむ。頭部感覚孔と側線孔は小さいが明瞭(めいりょう)で、その数は下顎に5、前鰓蓋骨に2、眼上に4、眼下に6、鰓部上方に9、臀(しり)びれより前方に70~74。口の前端に3本の大きな歯があり、上下両顎歯と鋤骨歯(じょこつし)(頭蓋床の最前端の骨にある歯)から離れている。上顎に8~9本、下顎に9本の小さい円錐歯(えんすいし)が1列に並ぶ。鋤骨には前部に3対(つい)、後部に1列に並ぶ6個の小さい歯がある。生時の体色は一様に暗紫色で、体側面が赤みを帯びた栗色。尾は黒みを帯び、頭は淡褐色。アルコール漬け標本では、体は頭の後部から後方では黒褐色で、躯幹(くかん)部(胴部)の後半の腹中線は黄色。頬(ほお)、目の前後、目の下に白点や小白斑(はん)がある。前鼻孔は白く、肛門は小さい黒い輪の中に開く。背びれは黒色。臀びれは黄色で、その縁辺が黒い。最大全長は約84センチメートル。水深5~20センチメートルの沿岸の砂底に潜り、頭部だけを出している。ビームトロールや定置網でとれることがある。
[尼岡邦夫 2019年6月18日]