日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロム鋼」の意味・わかりやすい解説
クロム鋼
くろむこう
chromium steel
クロムを含有する鋼。狭義には1%程度のクロムを含有する構造用合金鋼をいい、12%以上を含む高クロム鋼を普通ステンレス鋼、鋼の高温強度を高める目的で数%以下のクロムを添加した鋼を低合金耐熱鋼という。構造用合金鋼は車軸など強靭(きょうじん)性が要求される部材に用いる鋼の総称であり、0.5%以下の炭素を含み、焼入れ後650℃付近で焼き戻して使用される。肉厚になると急冷できず、焼きが入らなくなるのでクロムなどの合金元素が添加される。1%のクロムの添加により、クロム無添加丸棒の約3倍の直径の丸棒を焼入れ硬化させることができる。クロム鋼を焼戻し温度(約650℃)から急冷すると強靭になるが、この温度から徐冷をするときわめてもろくなる。この現象を焼戻し脆性(ぜいせい)という。
[須藤 一]