浸炭(読み)しんたん

百科事典マイペディアの解説

浸炭【しんたん】

の表面部の炭素含有量を増加させるため,炭素を含む媒剤中で加熱する処理。コークス木炭などによる固体浸炭,シアン化物による液体浸炭,一酸化炭素,メタンなどによるガス浸炭がある。浸炭後,肌焼(はだやき)を行って表面を硬化させた浸炭鋼は,耐摩耗性が大きく内部は粘り強いので,歯車,カム軸などの機械部品に使用される。
→関連項目シアン化ナトリウム表面硬化

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世界大百科事典 第2版の解説

しんたん【浸炭 carburizing】

比較的炭素量の少ない靱性(じんせい)のある低炭素鋼,低合金鋼(合金元素の種類,添加量の少ない鋼)の表面層に炭素を浸入固溶させる表面硬化法の一種。浸炭後に焼入れすると,表面はより硬く,耐摩耗性が良好で,芯部は強靱で衝撃抵抗の高い材料となるので,歯車,ピストンリング,機械部品の摺動部などに加工される。浸炭は,その炭素源の種類により,固体浸炭法液体浸炭法気体(ガス)浸炭法に分けられる。なお,浸炭によって造られた鋼を肌焼鋼という。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

浸炭
しんたん
carburization

固体状態の鉄に炭素原子をしみ込ませる処理のことをいう。鉄は室温では体心立方晶(α(アルファ)鉄)であり、炭素原子はほとんど入り込めない。しかし910℃以上では面心立方晶のγ(ガンマ)鉄となり、最大2%までの炭素原子が鉄原子のすきまに入り込めるようになる。炭素原子の溶け込んだγ鉄(これをオーステナイトという)を高温から急冷(焼入れ)すると、マルテンサイトとよばれる体心正方晶の組織になる。マルテンサイトは炭素濃度が高いほど硬いが、しかしもろくて折れやすい。浸炭は、炭素濃度の低い軟鉄の表面部を炭素濃度の高いマルテンサイトに変換することを目的とした表面硬化法であり、歯車などのように、摩耗せず、しかも割れにくい部品に利用されている。浸炭を行うには、粒状の木炭の中に鉄片を埋めて加熱する「固体浸炭法」が昔からの方法であった。しかし近年は、一酸化炭素やメタンガスを含む気体中で鉄片を加熱する「ガス浸炭法」が普及している。

[西沢泰二]

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化学辞典 第2版の解説

浸炭
シンタン
cementation

低炭素鋼,低炭素合金鋼を A1 点(727 ℃)以上に浸炭雰囲気中で加熱して,炭素を表面に拡散させて表面だけを高炭素鋼組成とし,次に焼入れ操作によって表面に硬化層を得る操作をいう.炭素は表面がもっとも濃度が高く,内部にいくに従って減少して低炭素のまま残される.これを焼入れすると表面のみ硬化するので耐摩耗性が付与され,一方,内部は強靭で衝撃抵抗が大となる.浸炭雰囲気は固体による場合とガスによる場合とに大別される.固体浸炭剤としては,木炭を主体としてこれに促進剤としてBaCO3,Na2CO3を加えたものが用いられる.ガス浸炭は,メタンあるいはCOガスが用いられる.浸炭を行う目的で成分を規定した鋼を肌焼鋼という.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報