日本大百科全書(ニッポニカ) 「グラールス」の意味・わかりやすい解説
グラールス
ぐらーるす
Glarus
スイス中東部にある山岳州の一つ。面積685平方キロメートル、人口3万8300(2001)。グラナー・アルプスの北斜面を占め、リント川が流れる。1352年にスイス連邦に加盟し、現在も毎年5月の第1日曜日に、古来の直接民主制による野外州民議会(ランツゲマインデLandsgemeinde)が州都グラールスで開催される。北部アルプスの純粋な家畜飼養地域に属するが、第一次、第二次、第三次産業人口はそれぞれ、9%、69%、22%である。第二次産業の人口比率はスイス全州中最大で、18世紀以降工業化のもっとも進んだ州となった。水力電気が豊富なことにより、19世紀には綿の家内工業から機械化工業へと転換して隆盛を迎えた。工業が農村に普及して酪農が集約化し、かつて普及していた夏季の家畜の高山放牧地(アルプ)への追い上げは廃れている。水力発電と観光業は自然条件にあった重要な経済活動である。住民はドイツ語圏に属し、その3分の2がプロテスタント。
州都グラールスはリント川中流左岸に位置し、人口5634(2001)。1861年5月フェーン現象による大火で町の半分が焼失したが、計画的な町造りにより、広い道路とその前面に石造家屋を配置することで、将来の防火に備えている。19世紀以降は繊維工業の一中心地。
[前島郁雄]